部長たちへのプレゼンテーションに向けて、4人はこれまで洗い出した施策を評価し、有効な施策をしぼり込んで提言することとなった。川口は施策の有効性を評価するための軸を考えるよう4人に指示した。
内山悟志の「IT人材育成物語」 前回までのあらすじ
川口は、解決案の評価の方法について説明を続けた。
「これまでの検討で『どのようにすれば、ITが事業に十分に貢献できるようになるか』に対する解決策と思われるアイデアが10個以上洗い出されたが、これらを一度に実行することは困難だ。そこで、これらの施策を何らかの評価軸で評価して優先順位をつけなければならない。どのような評価項目があるか考えてみようじゃないか」
川口がこのように「考えてみよう」というときは、誰かが自発的にアイデアを発言するのを待っているのだ。勉強会も回を重ねるにつれ、講師の意図が自然と伝わるようになっていた。
「やはり、ITの事業貢献のための施策を列挙したわけですから、『事業への貢献度』というのが、一番重要な評価軸ではないでしょうか」と宮下が口火を切った。これに対して浅賀が反応した。「事業への貢献度は確かに重要な指標だと思いますが、それを評価することは簡単ではないです。事業に貢献するといっても、『売上げが増える』『コストが下がる』といった直接的なものもあれば、『業務が省力化される』や『スピードアップする』といった間接的なものもあるわけですから、一概に事業への貢献度の大小を判断するのは難しいと思います」。
「それなら、事業への貢献度という大きな項目の下に『売上げ拡大』『コスト削減』『業務効率化』『業務迅速化』など小項目に細分して評価してはどうでしょうか」と阿部が提案した。奥山も負けずに「阿部さんの意見に賛成です。それぞれの小項目にスコアを付けて、それらを合計したものを事業への貢献度とすれば良いと思います」と付け加えた。
問題を投げ掛けると、4人の間で自発的にブレインストーミングが展開されていく。川口は、4人の成長ぶりを内心大いに喜んでいたが、黙って議論を聞いていた。
すると今度は阿部が「お金がかかる施策とお金がかからない施策があると思うのだけど、それも評価軸にならないかな」と首をかしげながら問い掛けた。「確かにそれも重要だね。それから、大勢の手間がかかるものとそうでないものもある。『実行の難易度』という軸でまとめられないだろうか」と浅賀が提案した。
なかなか良いアイデアが出てきたところで川口が「前に説明した“MECE”の考え方で整理して評価軸を決定しよう」と示唆した。奥山が立ち上がってホワイトボードにこれまで出た案を図に書き出し、ほかの3名がMECEを確認しながらいくつかの意見を加えて評価軸が出来上がった(図1)。
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早稲田大学商学学術院教授
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明治学院大学 経済学部准教授