ガバナンススタイルは、要求側と意志決定側がどのような関係にあるかを示すものです。主に6つのパターンで定義されます。
ガバナンススタイルの構成要素 | 意志決定権の所在 | 企業が実装している仕組み |
---|---|---|
ビジネス主導 | Cレベル(CEO、COO、CFO、CIO、CMO、CTOなど)の経営層 | 執行役員会のメンバーを含む情報システム戦略会議など |
IT主導 | ITの経営層グループ | ITリーダーシップ評議会(IT部門部長会)など |
封建制 | 事業部リーダーグループやリーダーから権限を与えられたグループ。権限はローカルに限定されている | 事業部門のみで構成されるIT(投資)委員会など |
連邦制 | ガバナンスの権限は、Cレベルの経営幹部グループと最低1つの事業部門グループで共有。ITグループも可 | 多様な組織レベルからの委員会など |
二頭制 | 権限はIT関連の経営層グループと事業部門グループで共有 | 事業部門にも権限を拡大することで、両部門間のシナジーを追及する |
無政府状態 | 各プロセスオーナーやエンドユーザー | 通常、正式なメカニズムはない。場当たりな意志決定で、各拠点のニーズに対処する |
意志決定を要求する権利とは、情報をインプット(入力)する権利のことです。意思決定を要求するならば、十分に情報を提供しなければなりません。権利と義務は表裏一体です。日本では、要求する権利ばかりを主張して、どのように決めてほしいかをインプットする義務を忘れがちです。
日本には協調し合って物事を決める文化があるので、ピンとこないかもしれません。ビジネス部門とIT部門のどちらが意志決定をするのか、もしくは協調して決めるのかといったスタイルともいえます。ビジネスとITの融合の第一歩といっても過言ではありません。
そして提供された情報を基に、企業がどのような仕組みやスタイルで意志決定をしていくかを意志決定領域ごとに定義し、運用していくことがITガバナンスなのです。
ガバナンスメカニズムは、ガバナンススタイルを実装する手段です。以下の項目を定義しています。これらは1つの意思決定ドメインに特有のもの、複数を網羅するものがあります。執行役員会(公式)や同僚との話し合い(非公式)から、役割(役職)、契約書まで含まれています。ここでは項目を列挙しておきます。
ITガバナンス構築で成功している企業の特徴も分かっています。まず、IT投資やITプリンシプルの設定では、ビジネス/IT部門の経営グループが十分にコミュニケーションを取り、優先順位の意志決定をしています。また、ITインフラストラクチャおよびITアーキテクチャの意志決定はITリーダーが下し、業務アプリケーションのニーズは、事業部の経営層が特定しています。
ITガバナンスを構成する3つの要素と効果的なITガバナンス体制の特徴から、下図が作成できます。これは、事業部制の企業が最適なITガバナンスを構築するための設計図になります。特に、意思決定権の適切な割り当てが求められるでしょう。
次回は、事業の方向性の違いにより、ITガバナンスのモデルがどう変化するかをご説明します。
2006年にガートナー ジャパン入社。それ以前は企業のシステム企画部門で情報システム戦略の企画立案、予算策定、プロジェクト・マネジメントを担当。大規模なシステム投資に端を発する業務改革プロジェクトにマネジメントの一員として参画した。ガートナーでは、CIO向けのメンバーシップ事業「エグゼクティブ・プログラム(EXP)」の日本の責任者を務める。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
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明治学院大学 経済学部准教授