「アルムナイ採用」とは、一度退職した社員をまた自社で採用する再入社を指す言葉で、採用難のこの時代に、アルムナイ採用は注目を浴びている。
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「アルムナイ」という言葉は、経営や人事に関わる人であれば、おそらくここ1〜2年の間に少なくとも1度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。
経団連の行った2022年版経営労働政策特別委員会報告では、日本型雇用の課題を克服するため、退職した元社員を再雇用する「アルムナイ採用」を有効であると述べています。また、経産省による「人材版伊藤レポート2.0」でアルムナイとの持続的な関係構築について言及されたことは、次世代の経営を担う読者の皆さまの中には、非常にインパクトがあるものとして受け取った人も多いことと推察します。
元々大学の卒業生や出身者を意味する言葉だった「アルムナイ」ですが、近年欧米企業を中心に、退職者に対しても使われるようになりました。日本でもここ数年アルムナイという言葉の認知は高まり、アルムナイ・リレーションシップに取り組む企業は急速に増加しています。
私の所属する株式会社ハッカズークでは、2017年に本書の共著である代表取締役グループCEOの鈴木が、日本にアルムナイ・リレーションシップの価値や考え方を普及させたいと考えるようになり、アルムナイ事業を開始しました。
2020年の調査では、アルムナイと元企業・元同僚(上司)との経済的な年間取引額を「アルムナイ経済圏」として規模を推計すると、年間1兆1500億円程度という調査結果が発表され、その注目は年を追うごとに高まりを見せています。(パーソル総研調べ、2020年)
冒頭で述べた「アルムナイ採用」とは、一度退職した社員をまた自社で採用する再入社を指す言葉です。採用難のこの時代に、アルムナイ採用は注目を浴びています。
しかし、アルムナイとの関係性を構築する中で再入社による成果だけを主目的にすることは、大きな機会損失であると、声を大にして伝えたいと思っています。
アルムナイは、貴重な「社外人的資本」です。
アルムナイを自社のファンや人的資本として捉えて関係性を構築することは、企業が保有する「人的資本」の最大化につながり、それこそが日本の企業が抱える人材不足やイノベーション創出といった課題の1つの解と捉えることができるのだと考えています。
株式会社ドリームインキュベータ(以下DI)では、「アルムナイの力を借りることは現役社員のエンパワーメントにつながることである」と捉え、それが会社のブランディングにつながり、ひいてはアルムナイにとってもDIに所属していたことを生涯の価値と感じられる「好循環」を生み出すものとして関係性構築に取り組んでいます
例えば社内研修のコンテンツとして、転職や起業したアルムナイの体験談を聞く機会を作ることで、社員が自身のキャリアを見つめ直し、自己研さんやリスキリングのきっかけとなっています。アルムナイの華々しい成功だけでなく、失敗を糧にした今後の展望を聞くという機会を通して、現役社員のキャリアオーナーシップを促進するカルチャーを着実に育めているそうです。
また、DIでは、新人研修の講師にアルムナイを業務委託で起用した実績もあります。社内の工数は削減したいが、重要な育成は信頼できる人に任せたい−そう考えた時、頭に浮かんだのがアルムナイの存在でした。会社のカルチャーや必要なスキルを熟知しているアルムナイの指導を受けつつ、外から見た会社の魅力を語ってもらうなどの交流は、社員のエンゲージメントの向上にもつながっているといいます。
このような事例を紹介すると、「コンサルティングファームや外資系企業であればうまくいきますよね」「日本の社会や企業の文化には合わないんじゃないか」というコメントをもらう機会が多くあります。しかし、日本企業こそアルムナイとの関係構築に取り組むべきですし、これまで取り組んでいない日本企業だからこそ得られる恩恵が多いと考えています。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授