クラウドには、インターネットさえあればユーザー部門主体でもすぐにシステムを利用できるという大きな利点があります。これはEUCの利点と似たものですが、同時に、部門が持つ情報がなかなか外に出てこない「情報のタコつぼ化」の発生リスクも有しています。情報のタコつぼ化のリスクは、最初から全社を対象とした電子メールやグループウェアといったシステムでは比較的低いと考えられます。
反対に特定部門を対象としたシステムの場合、例えばCRMやSFAのように販売・営業部門を主対象としたクラウドのシステムでは、このリスクはかなり高いと考えておいた方がよさそうです。ただし、タコつぼ化を防止する方法も存在します。
それは既存の会計システムなどのシステムと、新しく導入するクラウドのシステムを「適切に連携」させることで、顧客情報や売り上げ予測などの数値を同期させることです。これにより情報のタコつぼ化を防げます。ただし、適切な連携をするためには、(クラウド)システムの導入において「既存システムとの(データの)インタフェース処理」を行うために、(既存システムの)分析、設計、開発、テストといった非常に手間と時間のかかる作業が必要となります。
ちなみに、新システムを構築する際に必要なエンジニアの工数やコストの半分近くが、既存システムとのインタフェース関係に費やされるといったケースは、決して珍しいものではありません。
つまりクラウドの適用において、情報のタコつぼ化を適切な連携で防止しようとした瞬間、「新システムがすぐに利用可能」といったクラウドの最大の利点の1つを捨てざるを得なくなるのです。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
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明治学院大学 経済学部准教授