「現地化」を軸に日本企業による海外展開の動きが目立つ中で、懸念もある。その1つが、コンプライアンスだ。
2009年6月、日系大手メーカーは、ベトナム法人に出向している社員による横領事件について謝罪するプレスリリースを発表した。日本からベトナム子会社に出向し、財務担当責任者を務めていた社員が、現金数億円を私的流用していたという内容だ。「財務担当者であった上に隠ぺい工作も行われていたため、早期把握が困難だった」という。
この件については、この財務担当者は、自社製品をベトナム国内に流していたようだ。市場に商品として出回るものの、実際にはそのメーカーはベトナム市場で商品を販売していなかった。あるはずのない商品がベトナム市場で売られていたことで、問題が発覚したという。
いわゆる日本版SOX法の施行により、海外子会社などへの監査も厳しくなりつつある。具体的には、ERPや会計パッケージの導入を軸に、会計の透明性を担保する企業が多い。海外展開する際には、内部監査の体制の整備など、リスクへの管理にも注意を払う必要がありそうだ。
会計パッケージなども含め、実際に海外進出を検討するにあたり、業務を支える情報システムの導入も不可欠になってくる。実際に、海外進出している企業はどのようなICTを採用しているのか。
複数回答で聞いたところ、「日本と現地を結ぶネットワークの構築」が54.9%でトップ、「現地でのシステム構築/保守サービスの利用」が33.6%で続いた。VoIPを含めたUC(Unified Communication)が18%、「稼働率/可用性を保証するSLA締結」も15.6%で上位に入っている。
一方、「今後」導入したいインフラを聞くと、「SaaSによる業務アプリケーションサービス利用」が3位に入った。インターネット経由で業務アプリケーションが利用できるSaaS(サービスとしてのソフトウェア)は、ICTインフラ管理にコストをかけられない海外の現地法人にとって、非常に親和性が高いと考えられる。商習慣や文化なども含めた「現地化」に注力する一方で、ICTについてはなるべく人的リソースを割かないで済むような仕組みをつくるために、SaaSによるアプリケーション利用は企業にとって都合の良い選択肢になり得る。
長期的には人口が減少する日本に対し、アジアの人口は膨らみ続ける。欧米諸国よりも地理的条件で優位を持つ日本は、もろもろの条件をクリアしながら、積極的にこの「アジア内需」を取りにいくと考えられる。ポイントは現地化。一方で、全取り組みを支えるICTインフラの確立が海外展開の成否を左右する。
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早稲田大学商学学術院教授
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明治学院大学 経済学部准教授