内臓脂肪細胞はさまざまな働きを持つ物質を分泌することが最近分かってきました(表)。脂肪細胞があまり脂肪を溜め込んでない状態(肥大化してない)ではこれらの物質がバランス良く分泌されています。特にアディポネクチンは動脈硬化を予防する大事な働きがあります。しかし栄養過剰ででっぷりお腹となり脂肪細胞が肥大化すると、バランスが狂ってしまい、アディポネクチン分泌は減り、それ以外の成分は増えてしまうのです。その結果、インスリン抵抗性が増悪、それが引き金になって糖尿病・高脂血症・脂肪肝が発症したり、動脈硬化が進展する(血管年齢の老化)ことになります。
インスリン抵抗性が高まると、体内の血糖(グルコース)値が上昇します。グルコースと蛋白質が反応すると糖化反応物が生成され、この物質は身体のあちこちで悪さをします。血管の老化、神経の老化、皮膚の老化、目の老化など老化危険因子となります。
例えば皮膚のコラーゲン蛋白が糖化反応を起こすと、コラーゲンが変性して、皮膚の弾力性が失われます。身体の糖化を防ぐコツは1.食事はよく噛み、ゆっくり食べて、急激に血糖を上げないこと、2.体重・体脂肪を管理してメタボリックシンドロームを是正することです。最近では抗糖化サプリメント、抗糖化化粧品が開発されていますが、基本は生活療法です。わたしたちの調査では、従来から知られているドクダミ、カモミール、カミツレなどのハーブ類に抗糖化成分が豊富に含まれることが分かってきました。
そのほか、甲状腺ホルモン・成長ホルモン・IGF-I・蛋白同化ホルモンなどのホルモンが代謝機能に影響します。40歳を過ぎてこれらのホルモンが低下すると、さらに代謝機能が落ち、栄養過剰に対応しにくくなります。
代謝機能は100点満点のスコアとして評価されますが、いくつになっても80点以上を保ちたいものです。BMIが25以上の人、ウエストが88cm以上の人、体脂肪が多い人(男30%以上、女35%以上)、運動を全くしない人、飲酒量が多い人(1日2合以上、毎日)はスコアが70点以下に落ちている可能性があり要注意。ちなみにBMIは体重(kg)÷(身長(m)×身長(m))の式で計算できます。すでに検診で糖尿病・高血圧・高脂血症・脂肪肝が指摘されている人はスコアが60%以下なので、早急に管理・治療を行ってください。
米井嘉一(よねい よしかず)
同志社大学生命医科学部アンチエイジングリサーチセンター教授
1958年東京生まれ。1986年に慶應義塾大学大学院医学研究科博士課程を修了後、UCLAに留学。1989年に帰国後、日本鋼管病院内科 人間ドック脳ドック室部長を経て、2005年に同志社大学アンチエイジングリサーチセンター教授就任。現在は同志社大学生命医科学部の教授を兼任し研究に尽力するほか、日本抗加齢医学会の国際担当理事として、アジア、ヨーロッパ、アメリカなど各国の抗加齢医学会との交流に努める。主な著書に「抗加齢医学入門」(慶應義塾大学出版会)、「アンチエイジングのすすめ」(新潮社)など。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授