「老化」と言ってもさまざまですが、その多くは働き盛りの30〜40歳代に何かしらの形で現れ、やがて深刻なリスクにつながっていくのです。新連載「エグゼクティブのためのアンチエイジング」では、健康増進とともに日常生活の質を向上させ、最終的に健康長寿を目指すための「抗加齢(アンチエイジング)医学」について紹介します。
抗加齢医学(アンチエイジング医学)は日々の健康増進とともに生活の質(QOL:Quality of Life)を向上させ、最終的には健康長寿を目指すための医学です。老化と一言でくくっても、老化の仕方は人それぞれ、老化を促進する危険因子も人それぞれ異なっています。神経が老化する人、血管が老化する人、骨が老化する人など。
100歳を越えても元気に暮らしている人たちを百寿者と呼びますが、百寿者の方々を調べてみて分かったことは、身体全体が均質に老化していて、老化のバランスが良いことです。別の言い方をすれば、弱点が非常に少ないのです。多くの人たちが30歳代、40歳代で何らかの老化の弱点が出現し、それが大きなリます。やがて病気に発展して、ほかの良い部分にまで悪影響を与え、結局命取りになってしまうのです。従って、なるべく早い時期に老化の弱点を見つけ、全体のバランスをとることが大切です。
企業の経営にも同じことが言えます。収入と支出のバランス、人事のバランス、攻めと守りのバランス、投資と備蓄のバランス。これらのバランスに狂いは生じると、企業経営にも支障をきたすことになるのです。
エグゼクティブである読者の方々には、是非とも抗加齢医学の考え方を知って欲しいと思います。実際に企業内では、安全管理者、衛生管理者、産業医やさまざまの立場の方々がこれまでも従業員とその家族の健康管理のために働いています。ここにアンチエイジング医学が加われば、皆が元気になり、病気による欠勤率が減り、企業の生産性も高まります。病気が減るので健康保険組合の支出も減ります。健康増進により体力的にも精神的にも余裕が生まれれば、労働災害も減ることでしょう。一石が二鳥にも三鳥にもなる話なのです。
一般的に治療や指導の前には診断・評価という作業があります。抗加齢医学ではアンチエイジングドックがこの役割を果たします。ドックでは老化の仕方を筋年齢、血管年齢、神経年齢、ホルモン年齢、骨年齢などの機能年齢を測ります。老化危険因子として免疫機能、酸化ストレス、心身ストレス、生活習慣レベル、代謝を評価します。「アンチエイジングとは機能年齢の若返りと老化予防である」と言えるでしょう。老化度は裏を返せば「若さ度」になります。
企業健診にも抗加齢医学の考えを是非とも生かして欲しいと思います。実際にわたしが関与した企業や事業所でさまざまな試みがなされました。重役健診、部課長健診にアンチエイジングドックの項目を付加した事例、メタボリックシンドローム者を対象にした事例、ストレス性肥満の多い特定事業所を対象とした事例などです。
抗加齢QOL共通問診票の導入する方法は費用面からも手軽に実施できるアンチエイジング企業健診でしょう。この問診票はアンチエイジングドックや一部の企業健診、健康食品、化粧品、運動器具などの臨床試験にも使用されており、老化の指標との関連性を調べるデータは1万件以上もあります。
この研究成果を利用すれば、通常健診項目に共通問診票を加えるだけで、筋年齢、血管年齢、神経年齢、ホルモン年齢、骨年齢の推定評価値(若さの指標)が算出されます。もちろんそれぞれの年齢を医療機器で測定すればより正確なデータになります。また今後データがさらに集まれば、免疫力、酸化ストレス、心身ストレス度、生活習慣レベル、代謝といった老化危険因子(若さを損なう因子)についても、評価値を算出することが可能になるでしょう。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授