クラウドの経営インパクトは甚大クラウドで変える戦略IT投資(2)(2/3 ページ)

» 2010年08月17日 08時49分 公開
[遠山 浩二,ITmedia]

重要性が高まるIT投資ポートフォリオマネジメント

 クラウドのご利益を享受するため、これまで以上にIT投資ポートフォリオ戦略が重要性を持つ。IT投資・コスト削減のレバーとなるクラウドをいずれのシステムに導入するか、の判断であり、ITを含む業務の戦略性、および自社ケーパビリティが判断軸となる。

1.戦略性が高く、自社ケーパビリティが高い場合:自社にとって真に戦略的な機能でありかつ自社ケーパビリティが優れていれば、独自仕様のシステム保有を継続し、競争上の差別化の構築に貢献する

2.戦略性は高いが、自社ケーパビリティが劣る場合:この場合はクラウドから調達し、それの背後にある業務と思想も含め、自社レベルを他社水準にまで高める

3.戦略性は低く、自社ケーパビリティも低い場合:効率を追求して、クラウドから調達

4.戦略性は低いが、自社ケーパビリティが高い場合:これはまれ

 業務領域、及びアプリケーションシステム単位でこのような判断を行い、既存システムの保守運用や制度対応等への必要投資を軽減し、戦略IT領域にシフトする。ここで適切に、しかし大胆に判断できるか否かが、戦略IT投資の原資を生めるかどうかを左右する。

 戦略ITへの傾斜配分、これは、クラウド以前から続くITマネジメントに関する古くて新しい課題である。経営の無関心やシステム部門のスキル不足等により発生する戦略との不一致、部分(部門)最適となりがちなIT投資に対して、全社視点での優先順位に応じてIT投資を傾斜配分するという考え方であり、クラウド時代にはより重要な意味を帯びてくる。ユーザー部門からすると、サービスに業務をあわせるために、使い勝手が損なわれる。

 さらに、クラウド導入で捻り出した原資を別部門所管の戦略ITにあてようものなら、既得権益の維持に執心する当該ユーザー部門の徹底抗戦は避けられない。そして何も変えることが出来ずに現状踏襲、というのがワーストシナリオである。こうならないよう、マネジメント及びシステム部門が適切な牽制機能を発揮しなければならない。

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