もっと問題と思われる調査がある。2010年6月28日付日経に掲載されている「現代日本若者の人生観、“偉くなりたくない”顕著」である。日米韓中の高校生に「偉くなりたいですか?」と聞いた結果、「強くそう思う」と「まあそう思う」とで、韓中が80%前後、米が70%近くなのに、日本が40%を少し超えるくらい。「暮らしていける収入があればのんびりと暮らして生きたい」を「とてもそう思う」と答えた高校生は、米13.8%、中17.8%、韓21.6%に対し、日本は42.9%にも達した。
そのほかにも、日本の国内一流大学進学希望の割合が最低、海外留学希望者数も最低、高校生の勉強時間も減っている。このことを取り上げて将来の日本を憂える論調が多く見られるが、上掲の6月28日の日経記事をはじめとして、しからばどうすればいいのかという具体的提案がサッパリ見えない。無責任な議論だ。
問題提起者の議論の内容が無責任である上に、偉くなりたいとか、人より優れたいとか、のんびり暮らしたいという設問自体の定義があいまいならば、何をもって日本が他国に劣ると断言できるのか。「偉くなりたい」若者が70%も80%もいて、一体どうなってしまうのか。40%もいれば十分ではないか。ほとんどの若者が普通に暮らしたいと考えて何が問題なのか。むしろ正常ではないか。
日本の高度経済成長時代を高校生で過ごし、多くの若者が今の韓中に優るとも劣らない青雲の志に燃えていたはずの面々の成れの果てはどうか。短期間で政権を投げ出した政治家が何人もいるではないか。一方、平成時代に高校生活を送った「のんびり暮らしたい」族の中から、辻井伸行、松山冴花、上野道明など世界を舞台に立派に活躍している音楽家やスポーツマン、文化人など数え切れないほどいるではないか。若い科学者だって、やがて芽を出すための雌伏のときを送っているに違いない。
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明治学院大学 経済学部准教授