バッテリー交換式EVをタクシーにという挑戦――ベタープレイス・ジャパンの藤井清孝社長石黒不二代の「ビジネス革新のヒントをつかめ」(2/3 ページ)

» 2010年11月26日 15時18分 公開
[石黒不二代(ネットイヤー),ITmedia]

サービスイメージとそのダイナミズム

 藤井さんは、EVを日本で普及させるために連続して長距離を走る「タクシー」に着目し、2008年中旬からタクシーのEV化のために準備を進めてきました。実は、東京にはロンドン、パリ、ニューヨークの3大都市を合わせたよりもたくさんのタクシーが走っています。タクシーを選んだのは、東京のタクシーは乗用車登録台数のわずか2%ですが、走行距離が長いため、これが全部EVになると、20%ものCO2を削減できるのです。

 また、タクシーは一般に、一定期間の中で通常の自動車の10倍もの距離を走行しますから、初期投資を回収し、損益分岐点に達するのが早く、経済合理性があるわけです。

 ロンドンの黒いタクシーのように、タクシーというのは、面積の小さな大都市でその風情を発揮します。EVが走る環境に優しい街としてイメージづくりにも貢献するでしょう。政府の公用車がEVになるより、タクシーで広まれば、乗車した人が体感し、次に買うときにはEVにしようと考えるかもしれません。EV市場が成長期に入ったときに、一般需要も誘発するはずです。

 2009年5月には環境省の予算でバッテリー交換式EVの交換デモンストレーションを横浜で行い、2010年4月には、ビジネスとして成り立つかどうかを試すべく経済産業省 資源エネルギー庁のプロジェクトの一環として3台のEVタクシーを使って実証事業を始め今も実施しています(2010年11月現在)。同EVタクシーは、虎ノ門にあるバッテリー交換ステーションでフル充電されたバッテリーに交換し、日本交通の運営のもと、東京・六本木ヒルズのタクシー乗り場を基点として都内を走っています。

全車両を中央で集中管理できるため、より効率的なタクシー事業を運営できる

 ベタープレイスのサービスは交換だけでなくタクシー業界のあり方も変えていきそうです。今実施しているEVタクシーの運用でも使用しているステータスビューワーで閲覧すれば、バッテリーの残量や最短のバッテリー交換ステーションまでの距離、スピード、位置、タクシー運転手名、過去の履歴、などを中央で集中的に管理することができます。クラウドの管理がすすめば、タクシー会社は加盟料を払うだけでサービスが使えるので、人材派遣の役割が強まるといっても過言ではありません。EVになると管理面でもデジタル化が進み、業界全体としては2重投資が防げるようになります。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ITmedia エグゼクティブのご案内

「ITmedia エグゼクティブは、上場企業および上場相当企業の課長職以上を対象とした無料の会員制サービスを中心に、経営者やリーダー層向けにさまざまな情報を発信しています。
入会いただくとメールマガジンの購読、経営に役立つ旬なテーマで開催しているセミナー、勉強会にも参加いただけます。
ぜひこの機会にお申し込みください。
入会希望の方は必要事項を記入の上申請ください。審査の上登録させていただきます。
【入会条件】上場企業および上場相当企業の課長職以上

アドバイザリーボード

根来龍之

早稲田大学商学学術院教授

根来龍之

小尾敏夫

早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授

小尾敏夫

郡山史郎

株式会社CEAFOM 代表取締役社長

郡山史郎

西野弘

株式会社プロシード 代表取締役

西野弘

森田正隆

明治学院大学 経済学部准教授

森田正隆