バッテリー交換式EVをタクシーにという挑戦――ベタープレイス・ジャパンの藤井清孝社長石黒不二代の「ビジネス革新のヒントをつかめ」(1/3 ページ)

新たなうねりを生み出している電気自動車(EV)業界。環境のためにもEVの市場をつくり出すという藤井社長の戦略とは。

» 2010年11月26日 15時18分 公開
[石黒不二代(ネットイヤー),ITmedia]

石黒不二代の「ビジネス革新のヒントをつかめ」こちら


EVという産業の勃興

 EVに興味がありますか? ハイブリッド車などエコカーがわたしたちの生活にも徐々に入り込んできています。現在の開発競争の状況をかんがみれば、近い将来、当たり前のようにEVに乗っている自分の姿も想像できます。

 通常、産業のライフサイクルにおける導入期には、市場を創り出すことが重要で、製品の優位性についての啓蒙活動が重視されます。基本的な事業活動は、第1次需要を作り出すことで、優位性に関しては、技術だけではなく市場へのプレースメントの仕方や、収益性の面など、さまざまな角度からの考察が入り混じります。ですから、産業の勃興期での経営は大変だがエキサイティングなこと。そう思わせてくれる人に会いました。ベタープレイス・ジャパンの代表取締役社長を務める藤井清孝さんです。

ベタープレイス・ジャパンの藤井清孝社長と撮影

まずは市場の創造

 ベタープレイスはEVによるクリーンな交通インフラの構築を実現する会社です。EVが、軽自動車や政府の公用車としての利用だけでは環境を改善する起爆剤にはならないので、大量に普及させるために市場を創造しています。

 現在、EV市場の成長の足かせになっているのはバッテリーの値段と性能だそうです。車両代のうちの3分の1がバッテリー代です。バッテリーが150万円する車を買うということは、ガソリン代の5年分にあたります。本来は運用費として支払うものを、設備費として初期投資が必要になるわけですから二の足を踏むのは無理のないことです。1回の充電で可能な走行距離の限界は約120〜160キロメートルです。500キロを走るガソリン車に慣れた人にEVへの買い替えは進みません。経済性も利便性もガソリン車に劣るため、購入者は環境に敏感な人のみになります。これでは、市場の創造はできません。

 その解決策は、バッテリーとEV、別々の市場をつくることだとベタープレイスは考えます。

 お客さまの初期投資を減らすために、ベタープレイスがバッテリーを所有するのです。バッテリー交換型にして、充電済みのバッテリーをバッテリー交換ステーションでいつでも提供します。また、供給サイドがバッテリーを管理するメリットは他にもあり、バッテリーの劣化を防ぐために温度管理なども行います。

 技術面からも同様のことが言えます。固定式のバッテリーであれば、パソコンと同じでバッテリーが進化するたびに他の技術に関わりなく買い替えが必要になります。ソフトウェアと同様に、バッテリーは常に進化していますが、他のテクノロジーの進化スピードがボトルネックになり、古いバッテリーを使わざるを得ない状況にもなります。しかし、バッテリー交換式は、ベタープレイスがバッテリーを進化に応じてアップグレードすることで、利用者はバッテリーの進化を気にせずにEVを購入することができます。

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