こうしたベクトルの転換は、ほかの方法ではなかなか実現できるものではない。iPadなどのスマートデバイスが単なるPCの代替ではなく、インタフェースに革新性を持つ新たな媒体であることを裏付ける1つの事例ともいえそうだ。
トニー&ガイ恵比寿における導入効果は、ヘアスタイルの決定だけではないという。店内でのパーマやトリートメント、通常は落としにくい頭皮の汚れなどを落とせる最新技術をベースにしたサービスである「炭酸泉」や、ヘアブラシやプラチナローラーといった店で販売する美容器具の紹介もこのiPadを使って実施している。商品の特徴を分かりやすく伝えられるようになったため、こうした商品の売り上げが「以前よりも30%ほどアップした」。
一方、導入によるデメリットを挙げるとすると、「お客様が、髪型とは関係のないページなどを閲覧し始めたりすると困ることがある」という。店舗内で運用する際には、閲覧ページの設計や、想定外の利用を防ぐ仕組みを用意するといった取り組みも考えておく必要がありそうだ。
今回の取り組みに掛かった費用は、iPadの端末購入代金くらいだったという。コンテンツは基本的に、店舗内でスタッフが自ら撮影するため、特に余分な費用は発生していない。今後、河井氏はiPadを使った取り組みとして「お客様の画像に、架空のヘアスタイルを自由に組み合わせてヘアスタイルをシミュレーションできるサービスがあり、それを導入してみたい」と話す。
iPadの業務利用については、特に大量導入などを前提にした場合、端末の管理やOSアップグレードの作業が複雑になり得るといった課題がある。だが、今回のような小規模導入では、顧客サービスの向上などの直接的な効果が見込める。こうしたスマート端末の特性を生かせば、コストをかけなくても、楽しみながらでも業務の革新を試すことができる。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授