常日頃「論理的に考えて合理的な選択をしている」と思っていても、感情で判断していることが多くある。物事を数字に置き換えると、やるべきことが明確になる。
この記事は「経営者JP」の企画協力を受けております。
突然ですが、質問です。
あなたは1000円を渡され、A君と分けるように言われました。どう配分するかはあなたの一存で決めることができます。ただしA君には拒否権があります。あなたから提示された金額に不満なら、拒否権を行使することができます。拒否権を行使されると1000円は没収され、あなたにもA君にも1円も残りません。あなたはA君にいくら渡すと提案しますか?
いかがでしょう? 難しくはないのですが、人によって答えが分かれる問題です。わたしがやっているセミナーの参加者や、周囲の人にこの問題を出してみると、300円から500円くらいの額を答える人がほとんどでした。あなたならいくらと答えますか?
実は、純粋に経済合理性だけを考えるなら、「A君に1円渡す」が正解ということになります。A君にも得になる金額であり、自分の取り分を最大化できる金額が「1円」だからです。
0円はありえませんよね。A君に拒否されて1000円が没収されてしまうでしょう。しかし1円ならA君は拒否するよりも得です。拒否する理由がありません。だから合理的に考えると答えは1円となるわけです。
このゲームは金額を多くしたり男女差を見たり国際比較をしたりなどさまざまなバリエーションで実験されています。しかしどんな設定をしても提案額の平均値は45%前後になります。そして金額を提示される側(A君側)の立場でも考えてもらうと、半数の人は30%以下の金額を提示されると「拒否権を行使する」という結果が出ています。30%以下でも拒否しなければいくらかもらえるのに、実際には拒否する人が出てくるのです。
この実験が示していることは「わたしたちはいかに感情で判断しているか」ということです。日ごろ自分のことを「論理的に考えて合理的な選択をしている」と考えている人であっても、なかなか「1円」という答えをイメージすることはできないのではないでしょうか? 人は日常でもビジネスでも、常に何らかの意思決定をしています。
こうした意思決定をする際、人が「合理性」と「感情」の両面から判断することは自然なことですが、それを「何となく」行なっていては質の高い意思決定はできません。まずは「合理的に考えると?」という視点を持ち、「何となく」感情に引っ張られないことが重要です。
わたしは経営コンサルタントとしてさまざまな会社の会議に出席する機会があります。すると、何時間も終わらない会議を延々と行っている会社に遭遇することがあります。皆さんの会社でも心当たりはありませんか?
「毎週やっているけれど結局何も進展しない。しかも無駄な会議のせいで仕事がはかどらず残業する羽目になっている」終わらない会議の特徴として「数字を上手く使っていない」「定量的な分析ができていない」ということが挙げられます。
物事の量的な面に着目し、数字を使って分析することを「定量的」に分析すると言います。それに対し、質的な側面に注目して分析することを「定性的」に分析すると言います。終わらない会議をしている会社の多くは「定量的」な分析ができていないのです。
例えば「IT技術ですべてのビジネスパーソンの仕事の効率化を図ろう」という目的があるとします。これは定性的です。会議でこのような提案がされたとしても、「効率化とは具体的にどういうことなのか?」「これを実現するために何をすべきなのか?」といったことがよく分かりません。表現が定性的で、数字が入っていないので、具体的に話が進まないのです。
しかし「5年後にウェブアプリケーションを600社に販売し、市場シェア30%を達成しよう」などと定量的に表現すれば、目標達成のために何をすべきかが具体的に見えてきます。5年後に600社に販売するなら3年後には300社まで販売しなければいけない。そのためにはいま○○をすべきだ……と、やるべきことが明確になるのです。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授