真のグローバルカンパニーを目指して――HOYAの浜田宏COO石黒不二代の「ビジネス革新のヒントをつかめ」(1/3 ページ)

日本の市場が縮小していく中、海外進出は悲願である。社員の90%近くが外国人で、50%以上が外国人株主であるHOYAの、次なるグローバル展開は。

» 2010年12月20日 08時00分 公開
[ITmedia]

HOYAが変わる

 以前Dellの代表取締役だった浜田宏さんが、HOYAのCOO(最高執行責任者)に就任したのは2年前のこと。わたしも浜田さんとはDell時代に面識があり、数千人の組織を統率するはつらつとした外資系トップという印象を持っているためか、国際優良企業とはいえ、オーナー企業であり堅実な印象のHOYAと浜田さんのイメージをなかなか重ね合わせることができませんでした。しかし、インタビューを通して、浜田さんがHOYAの第2創業を目指していることを実感し、HOYAのイメージまで変わってしまったのです。

 浜田さんのDellでの在籍期間は1995年から2006年まで。そのうち6年が社長職です。しかも、韓国と中国のトップも兼ねていたので、年間出張は35回を数えるというタフガイ。そして、2008年4月、ペンタックス買収というHOYAが大勝負をかけたときに浜田さんに声が掛かりました。

HOYAの浜田宏COO

グローバル企業としてのリーダーの必要性

 HOYAのペンタックス買収の思惑は、メディカル分野への進出。HOYAのコアである光学レンズ事業と、カメラで知られる老舗光学機器メーカー、ペンタックスを統合することで相乗効果が見込め、また、内視鏡に代表されるメディカル分野での成長性も魅力でした。世界的に高齢化が進み、こと日本においては顕著です。また、日本は食の西洋化が進み大腸がんが増えるともいわれており、理論的には、必要度合いが増す機会でした。しかし、ふたを開けてみると想定以上の課題にぶつかり、そこに、リーマンショックが重なりました。

 M&Aの難しさは常にアフターマージにあります。最大の障害は文化の違いにあることが多いものです。HOYAとペンタックスの場合も同様でした。HOYAは事業部制をとり、事業部ごとにPLを管理し、それぞれが1つの会社として機能しています。判断が早く、事業部の業績が悪いと閉鎖もあります。事実、HOYAは創業時のコアビジネスだったクリスタル事業を閉じ、メディア事業をウェスタンデジタルに売却したり、事業部の統合を行ったりしてきました。

 一方の、ペンタックスには事業部があるものの、アメリカ、日本、ヨーロッパという地域別のオペレーションを組み合わせているので、事業部全体の収益性が社員には見えていませんでした。経営責任も不明確で、判断も遅くなります。

 事業部制のデメリットももちろんあります。事業部ごとに独自のITインフラを作るので、全社での互換性がなくなり、コストもかかります。また、事業部ごとに競争をしてしまい、協力関係が薄くなる場合もあります。

 どんな組織にも、メリットとデメリットがありますが、問題は、2つの相入れない組織があり、文化が違うということでした。特に買収される側のペンタックスの組織には力強いリーダーが必要でした。トップダウンでやらないとできないことがある、だからこそ浜田さんが招かれたのです。昨今、日本には政治にも企業にもリーダー不在と言われることが多いですが、グローバル化で、世界の企業と戦いを強いられている日本企業には、さらに強力なリーダーが求められています。

 組織を再編成するにあたり、工場を閉鎖する判断をせざるを得ないこともありました。浜田さんは、この時も前面に立ち行動します。工場の従業員を集め、体育館で説明。なによりも辛い作業ですが、何十億円の赤字が出るのが目に見えているものを放置するわけにはいきません。光学市場にも不況の波が訪れています。そして、カメラは家電製品となりハイテク化してきて、製造にスピードが要求されるようになりました。市場が変わる中で、仕組みを変えていかないと生き残れないのです。

 HOYAの株主は50%以上が外国人株主で、社員の90%近くが外国人で、もはやグローバルな企業です。税金も高く、製造業派遣を禁止し、R&Dの優遇税制もない日本で生産を続けることは、10倍もの人件費で他のグローバル企業との戦いを強いられることになるのです。事業の組み換えは必須でした。

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