エコ補助金以外は大して良い材料がなかった2010年だが、自動車であれ、家電であれ、エコ補助金を当てにして消費が盛り上がったのは間違いない。ただし、補助金という消費者を購買行動に駆り立てる動機付けとしては十分だったが、あくまで消費の先食いにすぎない。従って、来年前半の家電製品の出荷が地上デジタル停波の駆け込み需要があったとしても対前年比で大幅に落ち込むことは容易に想像できる。特に国内市場に頼っている東芝やシャープなどエコ補助金で勝ち組とされた企業は打撃を受けそうだ。
2010年に起きたもう1つ重要なファクターが円高だ。生産財の動向でも述べたが消費財も同様に大きな影響を受けた。また、円高の原因となった欧米の信用不安と景気刺激策は今後も続くと予想される。世界中の通貨で日本の円が高止まりした原因は日本の行政当局が長引くデフレで切るカードがないためだ。中国と並んで貿易収支の大きな黒字を抱えているが、それが日本市場に還流しない、また、海外からの投資もほかの欧米諸国と比較しても大幅に少ない状況では、円高が早期に終焉(しゅうえん)するとは思えない。
欧米先進国の経済減速とは対照的にアジア、南米、中東産油国など新興国の消費は一層拡大している。経済紙などは中国ばかりに目を向けているが、東アジアからインド、アラブへまたがる広範囲な地域が一様に経済発展の恩恵を受けている。彼らの強みは天然資源であり、低廉で上質な労働資源だ。過去、日本はこの地域を生産拠点として位置付け、長らく投資をしてきた歴史があるが、市場として評価をするようになったのはつい最近だ。
それも、家電では韓国企業に遅れを取った。一方、自動車産業はインドを中心に投資を続け、市場としても高く評価を行い、それなりに成功を収めている。このようなマーケティング投資の過去の失敗をどの程度挽回できるが2011年以降10年間の鍵を握りそうだ。
世界経済の不安以外で、日本を含む極東地域の軍事的緊張も不安要素として挙げておかなければならない。北朝鮮の砲撃事件や日本の領海における中国漁船の違法操業、北方四島へのロシアの大統領訪問など日本をめぐる国際情勢の緊張が高まっている。
これらの事象は今や国際ビジネスで日本のライバルに勇躍した韓国や中国にとってマイナス要素でもあるが、日本にとっても、決してプラス要素とはならない。また、原子爆弾製造の疑いをかけられているイランに日本は原油輸入で多くを頼っているなど、国際情勢の変化は日本にも大きな影響を及ぼすのだ。これらはすべて解決の筋道が決まったわけではない。つまり、2011年も引き続きわれわれを悩ますのは間違いない。
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明治学院大学 経済学部准教授