トルコの大学で教えてみたいと考えた理由の1つとして、トルコが親日国であることは初回に述べた通りである。史実や実績からも日本とトルコの友好関係が強いことは疑う余地はない。一方で、地理的な距離が遠い、日本とトルコの間の交流は限定されているように思われる。では、実際に生活してみるとどうなのか。また、これからの日本とトルコは、どのように協働していくことができるだろうか。
実際、この11カ月間イズミルに住んでみて、日本人ということが理由で嫌な思いをしたことはない。むしろ、一般的にはいまも経済大国としての日本への羨望のまなざしを感じることは少なくない。しかしながら、日本への関心が高いかというと、正直それほどでもないように思われる。それは、イズミルの地理的な位置や歴史的な経緯から、民族的にも文化的にも欧州との結びつきが強く、アジアの日本よりも欧州の近隣諸国との交易や人的交流が盛んなことに起因しているためであろう。
トルコには、食料資源の他に、未開発の鉱物資源やクリーンエネルギーの潜在的な供給能力があるといわれている。日本の先端技術とトルコの天然資源、および若年人口の増加を効果的に融合させることができれば、両国の経済協力の機会をさらに創り出すことが期待される。その際、協働作業のための重要な要素の1つは、人々の発想や行動様式の違いをどのように乗り越えるのかということであろう。トルコ人のバイタリティや自己表現力と、日本人の筋道を立てて、着実に物事を進めていく方法には正反対の部分もあるが、それぞれの特長である。
2つの国民性の違いを「相容れない異質なもの」ととらえるか、「相互補完により相乗効果が得られるチャンス」と考えるかにより、結果は大きく異なるだろう。次世代の日本人とトルコ人が友好的に交流し、あるいは、ビジネスパートナーとなるためには、双方が相手を尊重し、得意分野を役割分担することが大切だと考えている。
永井 裕久(ながい ひろひさ)
筑波大学大学院ビジネス科学研究科教授(海外研修休業中)、イズミル経済大学大学院経営科学研究科教授。専門は、組織行動学、人材開発。現在、イズミル経済大学においてMBA講義科目(Dynamics of Organization, Leadership Seminar, Organizational Behavior)を担当する傍ら、アジアと欧州の研究者と連携して、グローバルリーダーシップ・コンピテンシーのメタ認知学習に関する国際比較プロジェクトを進めている。編著書に、『女性プロフェッショナルたちから学ぶキャリア形成』ナカニシヤ出版(2009),『パフォーマンスを生み出すグローバルリーダーの条件』白桃書房 (2005)他、共著書、学術論文多数。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
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明治学院大学 経済学部准教授