日本企業が新たな付加価値を出し続けながら成長するためには、各企業に属する「人」を本当の意味で「人財」とする取り組みが欠かせません。人財を育成するために必要な観点、取り組み方法などをテーマごとに取り上げていきたいと思います。
日本市場の「超」成熟化、新興国の成長に伴う市場のグローバル化という多様化する環境下で、日本企業が新たな付加価値を出し続けながら成長するためには、各企業に属する「人」を本当の意味で「人財」とする取り組みが欠かせません。本コラムでは、読者の皆様のビジネスを少しでもお手伝いできるように、「人財」を育成するために必要な観点、取り組み方法などをテーマごとに取り上げていきたいと思います。
最初のテーマとして何を取り上げるべきかいろいろと考えました。
1.本コラムの読者は、ITにかかわる方が多いと思われる
2.ITを有効に活用するためには、SEのコミュニケーション能力向上が急務と著者自身が考えている
という理由から、最初のテーマとして「SEのコミュニケーション能力向上」を取り上げる事にしました。早速本題にと行きたいところですが、はじめになぜSEのコミュニケーション能力向上が急務だと考えているかについて書いておきたいと思います。
これは言うまでもないことと思いますが、現在の経営環境ではIT活用の巧拙がビジネス戦略の成否を決める非常に重要な要素になっています。ネットが普及し、ハードウェアとネットワークの価格性能比が上がり、モバイル端末などのユーザーインタフェースも格段に向上してきました。
このような状況下で、企業の経営者はITのパラダイムシフトを適切に把握し、適材適所でITをうまく活用できれば、工数レス・コストレスで機敏にビジネスチャンスをつかむ確率を上げる事ができる時代になりました。一方、このようなITのパラダイムシフトが起こっているにもかかわらず、ITの投資対効果が低いと嘆く経営者も多いことも事実です。IT構築・運用コストが膨らむ、ITの開発期間が延びる。何故、このような状況が生まれるのでしょうか? その理由は、もちろんケースバイケースでさまざまな要因があり得えますが、企業のIT部門、あるいはシステムインテグレーターが抱える構造的な課題が大きな比重を占めているのではないでしょうか。この構造的な課題とは、
90年代初頭から続く長期的な経済低迷期に、
ため、30代半ばから40代前半のIT現場の主力層に必要なスキルが十分に身についていない上、チームあるいは組織としての成果を追求することが難しい環境になっていること。
さらに、
といった状況が並行して進んだため、同じくIT現場の主力層がビジネスの目的を達成するために必要十分なIT知識を習得しきれない状況になっていることだと考えられます。もちろん、すべての企業がこのような状態になっているというわけではないですが、上記のような状況のいずれかは当てはまるという企業は多いのではないでしょうか。
このような構造的な課題は、少数の優秀な人材の属人的な力だけで解決できるものではなく、組織の取り組みとして解決策を考えて行かなければなりません。社内の上下左右の人材ばかりでなく、社外(お客様や協力会社)の必要な人材も巻き込んで、目的達成のために必要な力を持つ方々に協力してもらって実行しなければなりません。さらに、可能な限り早急に。このような状況を鑑みると、ITにかかわる人材、特に現場で主力となるSEのコミュニケーション能力向上が急務だと思われるのです。
前置きが長くなりましたが、ここから本題に入りましょう。今回のテーマに関しては何回かに分けて書こうと思いますが、初回では「コミュニケーション上の意識改革」に関して解説します。まず、以下のある営業部長とSEの会話を読んでみてください。
部長:わたしの友人の会社では、セールスフォースを導入して短期間に低コストで営業支援システムを構築したと聞いたのだが、当社ではそのような検討はしているのだろうか?
日経などの紙面でも、クラウドの有効活用の記事なども出ているし、来期は営業のシステム支援も拡充して業績向上に取り組みたいと思っているのだが。
SE:当社でセールスフォースを利用するのは、結構難しいですよ。当社の基幹システムはオフコンですから、SaaSのサービスを使うにはあまり適した環境ではありません。まずは、現在のシステムをオープン環境で再構築することが必要だと思いますが。
部長:それは、かなりの費用と時間がかかるんじゃないの? うちのシステムは、そんなに駄目なの?
SE:そうですね。だいぶ前に開発したものですから。今後のクラウド技術を有効に活用するために、SOAの思想に基づいてシステムを再構築した方が良いと、個人的には思っているのですが。
部長:そうか。専門家の君が言うのだから、そうなのだろうね。IT部門では、そういう検討をしているの?
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早稲田大学商学学術院教授
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明治学院大学 経済学部准教授