19世紀ドイツの軍事戦略家による「計画実行法」海外ベストセラーに学ぶ、もう1つのビジネス視点(1/3 ページ)

戦いの中では状況が目まぐるしく変わる。上官は目的を明確にし、指令はシンプルにすること。部下は必要な時には自主的に行動が取れるよう、常に準備を整えておく。ビジネスの世界も同様に、目的を達成できる組織づくりが望まれている。

» 2011年06月01日 07時00分 公開
[エグゼクティブブックサマリー,ITmedia]
エグゼクティブブックサマリー

 この記事は、洋書配信サービス「エグゼクティブブックサマリー」から記事提供を受け、抜粋を掲載したものです。サービスを運営するストラテジィエレメントのコンサルタント、鬼塚俊宏氏が中心となり、独自の視点で解説します。

3分で分かる「計画実行法」の要点

  • 組織は多くの場合、計画および戦略を効果的に実行することができない
  • そのような失敗の原因は、不明確な目的、分かりにくい方向性および不十分なコミュニケーションである
  • このような環境は従業員を混乱させ、何をすればよいのか分からなくさせる
  • このような失敗に悩まされている組織のリーダーは、分刻みで詳細な(そして多くの場合侮辱的な)指示を出し、従業員にストレスを与えてしまう傾向にある
  • 信頼は弱まり、皆シニカルになり、目標は達成できないままになる
  • フレデリック・ウィンズロー・テイラーが1911年に生み出した、影響力の大きい「科学的管理法」が、現代の組織が計画の実行に失敗する主な理由である
  • 科学的管理法とは従業員を考えないロボットにし、明確な計画に従わせるものである
  • このような細かな指示は、予測できない事態が発生した時は役に立たない
  • 19世紀ドイツの軍事戦略家であるカール・フォン・クラウゼビッツとヘルムート・フォン・モルトケの2人は、テイラーとは異なるより効果的な手法を提案した
  • 目的を明確にし、指令はシンプルにすること。

この要約書から学べること

  • 組織が適切に計画を実行に移せない理由
  • 計画、実行、結果の間にあるギャップ
  • 現代の企業リーダーが19世紀ドイツの軍事戦略家の方針を適用し、スムーズで効果的な運営を行う方法

本書の推薦コメント

 企業活動と軍事行動は非常に似ています。全体の戦略、アクションプラン、商品開発、戦術実行など、戦略コンサルタントである、著者のスティーブン・バンギーは、そのような類似点を、どのように戦略的ビジネス活動に生かしていくか? を本書で考察しています。

 よく使われている「歴史は繰り返す」という言葉があります。社会のサイクルは一定周期で回っており、賢者はこの周期から、今から何が起ころうとしているのか? いったい、今、何をすべきか? を学び取ろうとします。なぜなら、色々なことを予見できることは、ビジネスマンにとって必要不可欠だからに他なりません。「目的を達成する組織」を構築したい、すべての管理者の方にお勧めの良書だと思います。

 企業運営にはビジョンが必要です。数年後、数十年後の企業のあるべき姿を目標として、それに向かって進んでいく。それを無くして企業の成長はありません。そして、そこに行きつくまでにどういったプロセスを経ていくべきなのかを考える。それが経営戦略であり事業計画です。しかし、その計画を100%実践していくことがほとんどの企業にとっては困難な事のように思えます。

 何故そんなことが起こるのでしょうか? 立案した計画があまりにも現実とはかけ離れたものなのか? また、経営戦略上、それを実行する人間にスキルがないのか? 様々な事が考えられます。ともあれ、多くの企業において同様の事が起こっている事を考えれば、この両者ではないと言わざるを得ません。

 むしろ、確実にできることであり、実践するスキルを持ち合わせているのにもかかわらず、そこに摩訶不思議なブレーキがかかっているのかもしれません。

 本著においては、この理由について細かく分析を行いそれに対して、どのように修正していくべきなのかについて解説をしています。

 非常に興味深いのは、その手法が現代において生まれたものでなく、19世紀のドイツの軍事戦略にあると言うことです。「古きを訪ねて新しきを知れ」ということわざがありますが、まさに過去の素晴らしいノウハウには学ぶべきものが多くあります。皆さんの会社でもでもきっとありそうな諸問題をこの書を読みながら解決に導いていきましょう。

その戦略は実行に移せますか?

 組織にとって、戦略を実行に移すことが難しい場合がよくあります。複雑なビジネスの世界では、企業は気が付かないうちに混乱に見舞われ、企業運営の先行きが見えなくなってしまいます。従業員は息苦しさと矛盾を感じながら、分析やとりとめのない会議に長い時間を費やします。意志決定はむしばまれ、従業員や管理職者、重役の間にはストレスがたまります。

 心配性の経営者は、従業員は何をすべきか、意味の無い非生産的な指示を細かく出します。従業員は自然と、そのようなマイクロマネージメントに憤慨し、信頼関係はむしばまれます。その結果、どのように前進すれば良いのか、誰にも分からなくなります。そして、最も大切なことに、「私に何をして欲しいのか? 」という最も基本的な質問に、誰も明確に答えることができなくなるのです。

 これは、ある意味民主主義の世の中におけるジレンマとも言えるかもしれません。完全にトップダウン形式で指示が下されるのであれば、企業運営そのものがうまく行こうがそうでなかろうがトップの経営手腕にかかってくることになります。確かにこれはある意味原始的な経営かもしれませんが、複雑化したビジネス形態や組織が抱える大きな問題といえるでしょう。

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