従業員に常に忙しく仕事をこなしてもらうことは、それほど大変なことではありません。それよりも大変なのは、適切な行動、つまり、組織をより効果的かつ今まで以上の利益を得られるように運営するための行動を実行に移させることです。
この点について、1911年にフレデリック・ウィンズロー・テイラーが初めて提唱した旧式の「科学的管理法」は、責められるべきです。テイラーは、理想的な計画を立て、詳細な指示を出すことで従業員にロボットのようにその計画を実行させることを提案しました。しかし、計画立案者は未来を予測することは出来ません。よって、そのような計画は必ず行き詰まります。
1980年の経営学書のベストセラー「In Search of Excellence(邦題:エクセレント・カンパニー)」によって、テイラーモデルは哲学的適切さに欠けると考えられるようになりました。同書は「変更管理」を教え込み、管理することなく従業員を指揮することを提案したものです。
しかし、このようなぼんやりとしたアイディアを明確に理解することは簡単ではありませんでした。このアイディアが実際に意味していることが分かる人は誰もいない為、テイラーモデルは今も主要アイディアとして残っているのです。そのため、経営者は従業員が計画に従わないと文句を言い、従業員は経営者が立てる計画には効果が無いと不満を口にします。このように「計画、実行、結果」それぞれの間には次のようなギャップが存在します。
「計画、実行、結果」のギャップについて
・「計画と結果」の間――明瞭さが欠けていることで、従業員は過度に分析し、計画を理解し正しい結果を得るためにより多くの時間を会議に割かなければならない
・「計画と実行」の間――従業員に完璧に業務をこなすよう仕向けることは誰にも出来ない。計画と実行が合致しないと、経営者は細かな(その上迷惑な)指示を出すことで従業員を悩ませてしまう
・「実行と結果」の間――経営者は組織の外部環境をコントロールする事はできない。ある特定の計画の実行により彼らが得たいと望む結果は、多くの場合妨害される。その対応として、経営者は、重荷になるような効果の無い管理を行う道を選んでしまう
では、組織はどうすればよいのでしょう?
・本当に重要なことは何か判断する
完璧な計画を立てることは忘れる。今ある知識を使い、考えうる最善の結果を達成することに集中する。戦略を「計画」よりむしろ「意図」として立てる
・メッセージを広める
求める結果やその重要性を従業員に伝える。物事をシンプルにし、指示することで従業員を圧倒してはいけない
・従業員にスペースとサポートを提供する
未来の結果を予測できる人間はいない。従業員に柔軟性を持つよう促すことで、従業員は主要目的の達成のために常に努力してくれるようになる。幅広い範囲内で従業員に活動させる
確かに機械的に指示を出しそれに対して忠実に作業をこなすことは一見簡単なように思えます。それは感情を持たない機械ならばできることでしょうが、人間には感情があるわけで、「少なからず行う業務に何らかの意味」を持たさないとうまくいかないということです。
そこで、経営者の思惑と従業員の思惑にずれが生じ、計画が思うように進まなくなるわけです。そのギャップを埋めることが必要なのではないでしょうか?
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早稲田大学商学学術院教授
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明治学院大学 経済学部准教授