未来社会への投資、心の宝物を増やす寄付をしよう!会社人よ、社会人になろう!(2/3 ページ)

» 2011年09月09日 08時00分 公開
[鷹野秀征(ソーシャルウィンドウ),ITmedia]

自律的な社会課題解決システムを育む寄付とは

 寄付の持つ3つの力は、社会にとって自律的な社会課題解決システムを育て発展させていく力となります。優れたNPOへの寄付は「未来社会への投資」です。

 日本でNPO法ができたのは1998年ですが、きっかけは1995年の阪神淡路大震災でした。ボランティア元年と言われたこの年、それまで草の根運動だった市民活動が力を発揮し、行政に頼りきりだった日本社会にNPOの必要性を強く認識させました。

 その結果、東日本大震災では多くのNPOが活躍しています。今年は「寄付元年」と呼ばれ始めていますが、寄付の受け皿であるNPOが社会を支える力を持ってきたのです。これを後押しするように6月22日には寄付の税額控除に関する法案が成立しました。簡単に言うと、認定NPO等への寄付について寄付額の半分が税金から戻ってくるというものです(正確には国税庁のHPを見てください)。

 昨年、鳩山内閣の「新しい公共」円卓会議でようやく財務省の厚い壁を突破しました。税額控除は行政とNPOが対等な関係であることを示しています。欧米で先行している「税金かNPOへの寄付か」という選択肢を市民に与えた画期的な出来事でした。震災前には政権のごたごたで法案成立が危ぶまれましたが、震災を機に寄付の持つ力が広く認識され今年度の寄付から税額控除が適用となりました。ここでも政策提言NPOの「シーズ・市民活動を支える制度をつくる会」が大活躍しています。

 ドラッカーはNPOを「社会変革装置」と位置づけました。市民が課題を見つけ自らが解決者となる自律的な社会課題解決システムとしてのNPOは、市民の寄付によって育っていきます。寄付は自分が社会に必要だと感じる支援活動を同志に託すことです。お金を通じたボランティアであり、市民自らの手による社会事業への参加チケットです。まだまだ復興まで長い道のりです。多くの方に寄付を通じて新しい社会創りに参加して欲しいと思います。

企業が社員寄付を促進するメリット

 企業は社会貢献活動として寄付をしますが、社員に寄付を推奨し促進する企業はまだ多くありません。理由のひとつは、寄付は個人の自主性によるもので企業が介入するものではないとの考えです。これはもっともで必要以上に寄付を強制するようになってはいけませんが、適切な社員寄付の促進は企業と社員双方に多くのメリットがあります。

 まず寄付は社会参加の第1歩であり、仕事とは別に自分の居場所をつくるきっかけになります。会社の外に出たとき、地域社会やNPOで自分のスキルが生かせることは多いです。例えばExcelが使えれば地域コミュニティではヒーローですし、広報誌やHPが作れれば新たなつながりができます。早めに社会の役に立つ経験を持つことは、仕事本来の意味を考える上でも非常に有効なのです。

 最も大きな効果は企業への共感を高めることです。寄付は社員の自主性によるものですが、寄付先を調べて選ぶのはなかなか大変です。そこで企業理念や事業領域に関連したNPOを選定して紹介する意味があります。そもそも社員は企業に何らかの共感を持って入社していますから、企業の推奨する寄付先に共感する可能性も高くなります。いずれ社員とNPOスタッフの個人的なつながりから、企業とNPOが連携した新しい協働事業の芽が出るかもしれません。そして何よりも「心の宝物を増やす寄付」は、社員の人生を豊かにしてくれます。企業が社員の幸せを重要と考えるなら、寄付の推奨は大切な要素の1つになり得るのです。

 世界には寄付で変えられる課題が沢山あります。途上国の貧困脱出、自然環境の保全、障がい者の普通の生活、DV被害者の保護・防止、児童虐待防止、まちづくりなどなど。ただし「自己満足」ではなく、「未来社会への投資」としての寄付が必要です。

 当事者にとって自分の辛い気持ちを分かってくれる人がいることは何よりも心の支えとなります。活動者にとっては力強い応援と同時に有効活用しなければと心が引き締まります。そして寄付者には「感動と感謝とつながり」という大きな財産ができます。

 社会には、助け合い支え合いの心という素晴らしいDNAが組み込まれています。人の役に立つと幸せを感じるのはそのためではないでしょうか。自律神経のように、健全な社会を自ら創っていく力を社会は本来備えているのだと思います。

 心の宝物を増やす寄付をしよう!

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