東日本大震災から6か月。心なしか世間の関心が薄れてきているが、被災地はまだまだ復興には程遠い。今だからこそ被災地の人々に寄り添った支援が必要とされている。現地に行かなくても支えることができる。
東日本大震災の被災者支援に寄付した人は多いと思います。筆者は寄付サイトGive One(ギブワン)の運営に携わっていることもあり、寄付金の使い道が明確で、団体が信頼でき、活動内容に強く共感するNPOに寄付しました。
震災直後から被災地に飛び込み、刻々と変化する現地の状況に合わせて、実績に裏打ちされたきめ細かい支援を行うNPO。日本を代表する医療支援の「AMDA」、海外の大災害に真っ先に駆けつける「ピースウィンズ・ジャパン」、障害者・高齢者・乳幼児など災害弱者を支援する「難民を助ける会」、ボランティアと一緒に地域コミュニティ再建を支援する「JEN」、患者会から発展した当事者団体「アレルギー支援ネットワーク」などなど、それぞれ得意分野があり、行政にはないノウハウを持つ素晴らしい団体が日本にも数多く存在します。
大災害時の寄付の行き先は大きく分けて「被災者」「NPO」「自治体等」の3種類があります。1つ目は赤十字社や赤い羽根共同募金会が窓口になって募金を集め、全額を被災者に配分する「義援金」です。配分の遅さが問題となりましたが、被災者に現金が届くことは何よりの支援です。2つ目はNPOが行う支援活動の資金として団体に託す「支援金」です。Give Oneは信頼できるNPOを紹介し、支援金を促進しています。3つ目の自治体への寄付は各自治体が行う復興事業などに使われます。おおむね税金と同様と考えていいと思います。(義援金と支援金の違いについて詳しくは筆者ブログを参照ください。)
多くの寄付がメディアで告知される義援金や自治体に集中する中、あえて知名度のないNPOに寄付した人はどのような思いを持っているのでしょうか。ここに「寄付の持つ3つの力」が見えてきます。Give Oneに寄せられた応援メッセージから代表例を紹介します。(※は筆者コメント)
「被災地の皆さまへ今圧倒的に足りてない、水・食料・毛布を 一刻も早く、1つでも多く届けてください! 私たちの代わりにお願いします」(ピースウィンズ・ジャパンへ)
※震災直後の切迫感の中、何かせずには居られない強い思いが伝わってきます。
「乳児を抱える母親に対する心配をしてしまいます。わたし自身現在乳児育児中で、その大変さを毎日痛感しているため、災害にあった育児ママ(パパ)の心情はいかばかりか、と察せずにはいられません。そのため、小額ではありますが、寄付を致します。赤ちゃんに必要な粉ミルクや衣服、授乳が出来るスペースの確保に使っていただければ幸いです」(難民を助ける会へ)
※当事者の気持ちが痛いほど分かり、具体的な使い道の記述が胸に迫ります。
「わが家もマルチアレルギーの息子がいます。被災地で困っているアレルギーっ子のために、少しですが役立ててください。現地に向かわれる方、困難な交通状況の中、ご苦労様です。支援を待っているアレルギーっ子のために頑張ってください」(アレルギー支援ネットワークへ)
※同じ苦しみを抱える子の心配に加え、NPOスタッフへの気遣いと応援が伝わります。
「現在フランスに在住している日本人です。私も神戸淡路大震災の被災者です。この経験から、確実に被災者への援助にお金が回ると思われる貴団体に寄付をします」(JENへ)
※被災経験者ならではの、寄付の有効活用に対する願いが感じられます。
「被災地での医療活動ありがとうございます。日本の医師の1人として、いち早く現地に行ってくださるグループがあることをありがたく思います」(AMDAへ)
※同じ医師の同志としての応援は実に心強いものです。
震災直後から、連日感動的な応援メッセージが多数届けられました。その共通の思いは「わたしたちの代わりにお願いします」という言葉に集約されています。自らの意思と行動で社会の課題を解決しようとする「社会起業家」マインドを持った人たちの存在は、寄付の持つ3つの力の結節点となります。
第1の力は困難を抱える“当事者の課題を解決する力”です。水、毛布、赤ん坊のミルク、アレルギーの子。他人事ではなく「もし自分だったら」と具体的なシーンを重ね合わせることでお金に意思が入ります。NPOがすぐに使える支援金は、現地ニーズに即した有効な対策を講じることができ、被災者の課題解決を早めます。例えば、避難所にパンしか来ないとき、小麦アレルギーの子がどれほど苦しんだことでしょう。想像力が寄付に力を与えます。
第2の力は支援活動を行う“現地の活動者を応援する力”です。「日本の医師の1人としてありがたく思います」「困難な交通状況の中、ご苦労様です」。寄付はお金によるボランティアと言われますが、寄付者は間接的にその活動に参加しています。是非応援メッセージを送ってください。大きな心の支えになっています。
そして第3の力は“寄付者の心の宝物を増やす力”です。寄付したことで自己満足が生じますが、醍醐味(だいごみ)はこの後の活動報告です。報告には現地で当事者が困難に負けずに頑張っている様子が描かれ、時に感動すら覚えます。使命感を持って当事者に寄り添うNPOスタッフの働きには感謝の念が生じます。現地には行けなくても「感動と感謝とつながり」が得られる寄付は、映画や芸術鑑賞やスポーツ観戦のように、お金を出す側に勇気と元気を与えてくれるのです。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授