2000年初頭、数多くの大規模な会計スキャンダルが明るみに出ました。その全ては内部告発者によって暴かれました。その中で、最も際立ったスキャンダルにより、2人の内部告発者がメディアの注目を浴びました。1人はエンロン社の経営企画副社長のシェロン・ワトキンスで、エンロン社の不正会計を暴いた人物です。もう1人はワールドコム社の副社長であり内部監査を担当していたシンシア・クーパーで、ワールドコム社の疑わしい金融活動を同社の理事に告発しました。2002年、タイム誌はこの2人の女性を、連邦捜査局(FBI)の内部告発者であるコリーン・ローリンと一緒にパーソン・オブ・ザ・イヤーとして称賛しました。
長年に渡り数多くの内部告発者を支えて来た「政府の説明責任プロジェクト(GAP)」は、内部告発者を「言論の自由を使い、国民の信頼を裏切る職権の乱用に挑戦する人」と定義しています。チャールズ・グラスリー上院議員は「炭鉱のカナリア」ともっと簡潔な表現を使っています。彼らの役割の定義が何であれ、内部告発者は価値のある公共サービスを提供しています。彼らの活躍によって、核災害が回避され、危険な処方薬が市場に出回らずに済み、大規模な企業不正が暴かれました。しかし、多くの場合、彼らが勇気を振り絞った見返りに得るものは、報復による追求、嫌がらせ、脅し、左遷あるいは解雇、要注意人物としての扱いなどなのです。
内部告発は確かに社会に対しての不正を暴く重要な役割を行います。しかしながらそれは、個人に対するリスクを大きく課す事になってしまうことも忘れてはなりません。
もし組織的不正行為が行われていることを知ってしまったら、告発するべきでしょうか? 人生に与える影響は大きいため、慎重に考え決断しなければなりません。1度告発してしまえば、もう後戻りはできないことを理解しておいて下さい。
最初に、気付いてしまったその疑わしい行為には暴露する価値があるのか判断して下さい。GAPは次のような3つの判断基準を設けています。
(1)違法だと思われるその行為には、暴露するために要する時間や労力をかける価値があるか?
(2)告発を裏付ける証拠があるか? それは現実的なものか?
(3)問題を暴露することで、本当の改善に繋がるか?
もしこの3つの質問全てに「はい」と答えることができるのならば、内部告発するべき問題を抱えていることになります。長い道のりに備えて下さい。問題が複雑であれば、解決するのに何年もかかる場合があります。あるいは、もしかしたら、正しいことを証明できずに終わってしまうかもしれません。告発をするかしないか? ここではその判断基準について言及をしています。今、告発を考えているのであればこの3つについて良く考えてみることが必要です。
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早稲田大学商学学術院教授
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明治学院大学 経済学部准教授