企業の不正行為を目撃した時どうするか? 真実にすべてを捧げようと思うことは素晴らしいし、正義のために戦うべきだが、その前に、告発した後に起こりうる出来事に備えよう。
この記事は、洋書配信サービス「エグゼクティブブックサマリー」から記事提供を受け、抜粋を掲載したものです。サービスを運営するストラテジィエレメントのコンサルタント、鬼塚俊宏氏が中心となり、独自の視点で解説します。
この要約書から学べること
内部告発者は、困難な、時には危険な道を歩みます。本書の中で著者は、企業犯罪を告発し、その過程の中で自分自身を守る方法を教えています。ジェフリー・ワイガンド博士(有名な内部告発者。自身の科学的証言によってタバコ会社に深刻なダメージを与えた)は「内部告発者」という言葉を「良心の人」と言い変えるよう提言しています。名前が何であろうと、内部告発者は多くの場合、勇敢にも自分達のキャリアや暮らし、心の安らぎ、さらには健康すらも犠牲にして官民の不正行為を暴きます。
そして次の調査結果について考えてみて下さい。従業員の50%が企業の不正行為を目撃していますが、そのわずか40%しかそれについて何らかの行動を取っていません。事例が沢山紹介された参考になる本書を、自分自身を守る術を知る必要のある内部告発者予備軍や、告発者を潰したり黙殺したりすることは間違った事であると知るべき企業リーダーにお勧めします。そしてもちろん、正しい道を進む、内部告発に恐れる必要の無い企業にエールを送ります。
「社内告発」大変に難しい問題だと思います。告発の意図とは何であるのか? ここに焦点が大きく集まるのですが、「会社の不正を正す」という大義名分の上でそれを行うというのであれば、確かに社会においてそれは評価されるべきことなのでしょうが、正義を貫くはずの告発が、逆にその本人がその企業から犯罪者扱いをされ、自分の社会生活環境をガラリと変えてしまうというリスクがあります。もし、自分に襲いかかるリスクを得てまで許し難い行為を会社が行い、それが将来的に自身の身にふりかかる可能性があるのであれば、告発も1つの方法だと思います。
しかし、闇雲に個人が企業を相手に告発しても決して勝てるものではありません。本当に告発するのであれば、必ず擁護してくれる第三者を見つけることも大切ですし、長期戦になっても構わないという覚悟も必要になってくるでしょう。「内部告発」というのは言わば自分の人生を賭けた戦いとなる事を考えて行わねばならないのです。
本書では、そうした「内部告発」についての事例から、その手順について、今後を生き残って行くための策が満載の1冊です。自らの信念を貫き、戦っていく決死の覚悟を持っているなら、まず告発を起こすまでにこの書をじっくり読んでみることをお勧めします。
1988年、ジェフリー・ワイガンド博士は研究開発委員長としてタバコ会社であるブラウン・アンド・ウィリアムソン(B&W)社で働き始めました。ワイガンドは、自分の仕事は喫煙者の健康への害が少ないタバコを開発することだと理解していました。しかし、入社した後、自分の本当の役割は、(はっきり言って)偽装行為を行うことだったとすぐに気が付きました。
B&W社は、喫煙者が起こした訴訟に対し偽装を行うためにワイガンドや他の科学者を雇ったのです。1993年、ワイガンドが喫煙の有害効果に関する研究を行なったため、B&W社はワイガンドを解雇しました。さらに、機密保持契約に同意しない限り退職金は支払わないと通告してきたのです。
B&W社はワイガンドの信用を傷つけるために最終的に80億ドル以上を費やしましたが、結局のところ、脅す相手を間違えていました。ワイガンドはすぐ、米国のニュース番組の調査報道記者と手を組みました。タバコ産業を相手取った裁判でのワイガンドの証言の1部に基づき、1998年、39の米国州検事が国内のたばこ会社大手4社に対し、2060億ドルの賠償金を原告に支払うよう命じました。
しかし、ワイガンドはこの内部告発で多大な個人的犠牲を払いました。数多くの殺害の脅しを受けましたし、彼の小さな子どもも同じように脅しにあい、ボディガードを付けて移動しなければなりませんでした。世界で最も有名で、最も能力のある企業内部告発者の1人として、ワイガンドは、自分と同じ困難で孤独な道を進もうとしている人に次のようなアドバイスをしています。
ワイガンド氏の的確なアドバイス
・備える−最悪の事態を予期して下さい。ワイガンドは内部告発を「最もリスクが高く、最も危険で、最も刺激的で、最も幻滅する行為」だと述べています。
・途中で止めてはならない―内部告発は短距離走ではありません。長距離走です。長期間、専念しなければなりません。
・確実に仲間を持つ――自分1人では何もできません。
・真実が完全に明らかになるまで、諦めてはいけない――真実を求めて闘うことこそ、企業内部告発が求めていることです。
ここに書かれている告発の事例はごく一般のものに比べれば確かに極端すぎるくらいに大きな事件であることは間違いがありません。しかし、告発を起こすリスクが本人のみならず周囲の人間にまで影響をおよぼすこと、そして行うからにはそれに対する危機管理をしっかりする事などの本質がここにあると思います。
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明治学院大学 経済学部准教授