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» 2011年12月12日 08時00分 公開

生き残れない経営:企業人よ、大いに失敗しろ、むしろ成功するなかれ!? (その1) (2/3)

[増岡直二郎(nao IT研究所),ITmedia]

経営現場での失敗の実例

 経営現場での失敗の実例を引用しながら、考えていこう。

 大手情報機器メーカーA社の例だ。A社のいくつもの関連会社(子会社)のうち、通信・情報関連と思われる4社が合併された。しかしどうみても合併には無理があったと、4社のうちの1社であるB社の元役員が話す。なぜなら、(1)4社のコア技術が異なり、顧客層も全く異質だった、(2)合併検討中の親であるA社からB社への事前調査は、半官半民の某社からA社に役員候補で派遣されたばかりの人がB社社長に数十分の面談に来ただけ、(3)後日聞かされた話だが、A社に設置された合併検討プロジェクトチームのメンバーが言うには、合併検討の指示が上から来て検討を始めたが、合併を正当付ける理由がなかなか見つからなかった、(4)どうやらA社ナンバー2の指示で、A社トータルの合理化推進の人身御供にされたようだ、というわけだ。

 案の定、合併2年後にB社が再分離され、合併会社の子会社として独立させられた。しかしB社は、合併中の2年間に専業メーカーとしての業界から外され、顧客を失い、その間の社内の経営判断は遅れ、再分離後は人材採用が不利になり、失うものばかりだった。この合併・再分離の弊害は途方もなく大きいのに、その失敗の責任を、合併仕掛け人のA社幹部始め誰も取っていない。責任放置の体質は、大問題だ。

 この合併に関係した人間は、あるいはA社の体質は、有名な心理検査「PFスタディ」を開発した米国ワシントン大学心理学教授だった故ソール・ローゼンツアイク博士が分類する、失敗する態度に問題がある3カテゴリー「他責的」「無責的」「自責的」(DHBR July 2011)のうちの、「無責的」に相当するのだろう。克服しなければならない問題点だ。

 もう1つは、健康機器メーカーC社が販売した製品が市場で発火事故を発生させた例だ。家庭の壁を焦がした程度で、地方で発生したこともあり、C社品質管理部門は事故が表沙汰になることを避けるため、直ちに被害宅や地元消防署、マスコミに口止めに走った。しかし姑息な方法は通じないもので、事故はマスコミに取り上げられた。C社では、社長命令によって当該事故の関連部門トップ始め関係幹部は一斉処分された。

 それから数年間は、当該部門の関係者の処遇・人事評価すべてが執拗なまでに仕打ちを食らった。ここで問題にする失敗は、事故製品ではなく、事故後の関係者や社長の考え方や行動である。そこには、「他責的」と「無責的」が混在している。関係者は責任を逃れようとし、社長は直接関係者に責任を押し付けて、見せしめの処罰をすることばかりに執心し、いずれも失敗を生かそうとする考えが皆無である。この場合、失敗から学ぶことは極めて大きいはずなのに。

 失敗を生かすためのアプローチの方法を、個人と組織に分けて考えよう。

多くの幹部が、A社幹部のように責任を回避したり、C社社長や関係者のように責任を回避したり転化したり、反省ではなく仕打ちに執心したりしては失敗の学習が期待できず、悪い結果をもたらす。

 個人としてのアプローチ方法として、ニューヨーク大学ベン・ダットナー教授らは、「生産的な職場環境を培い、そこで成長するために、われわれはこうした(上例のような:筆者注)傾向を知り、克服する必要」があり、そのために1、自分が上記3カテゴリーのいずれに当てはまるかを判定・認識し、2、政治的認識力を培えとする(DHBR July 2011)。政治的認識力とは、(1)耳を傾けて会話をする、(2)衝動的に対応せず行動する前に考える、(3)色々な人に教訓を求める、ことだ。以上は極めて当たり前のことである。

 しかし、その当たり前のことがA、C社の例に見たように経営者・管理者にできないから、失敗が生かされない。経営者・管理者は、日頃の自分のやり方を強く反省するべきだ。

 なお、このアプローチの方法は単に失敗を生かすために役立つだけではなく、経営者・企業人としての自己成長のステップにもなるということを肝に銘ずべきだ。

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