ビジョンはあるが、実はあまり浸透していないという会社が少なくない。なぜ、浸透しないのか。その原因は。
「ビジョンが組織に浸透しない。ミドルマネジャーが途中で止めているのではないか」と社長が怒っている、といった話をときどき耳にします。はたして、ビジョンが浸透しない原因は、組織の中のどこかにそれをせき止めたり、勝手にゆがめて伝えたりする人がいるからでしょうか?そうではなく、「ビジョンが浸透しない」といわれているケースのほとんどは、伝え方に問題があるか、ビジョンそのものに問題があるか、社内コミュニケーションに問題があるかのどれかです。
企業のビジョンとは、その企業が将来、どのような姿になりたいのかを表したものです。その表現方法に決まり事はないため、絵でも動画でも工作でも構いませんが、通常は言葉で示されます。しかし、ビジョンが言葉で表されたとき、ほとんどの場合、どこかで聞いたようなありきたりな表現になってしまいます。斬新な言葉を使えばよいというわけではないので、それは仕方のないことですが、社員にすればどこに目新しさがあるのか、他社のビジョンとどこが違うのかがよく分かりません。
例えば、「豊かな社会づくりに貢献できる会社を目指す」とか、「業界でオンリーワンの企業になる」とかいった言葉の意味は、日本語を知っていれば分かりますが、それだけでビジョンの本当の意味は理解できません。言葉で示される「情報」だけではなく、なぜそのビジョンを目指すのかという「意図」が分からなければ、ビジョンの意味が理解できないからです。
さすがにビジョンを表した言葉だけを提示して、社員に意味を理解させようとする会社はほとんどないに違いありません。同時に、なぜそのビジョンなのかという理由が説明されるはずです。けれども、その説明の仕方が誤解されているケースが少なくないように思います。
例えば、「企業の社会的責任が重視される時代になった。社会に貢献できない会社は生き残れない。だから、社会に貢献する会社を目指す」とか、「市場が成熟し、競争が激しくなっているため、圧倒的な差別化要因が必要だ。だから、オンリーワン企業になりたい」とかいった説明がなされるかもしれません。経営環境がこう変わるから、このビジョンを目指すという説明です。
そのような説明が無益というわけではありませんが、社員がそれを聞いてもあまり新鮮さを感じないでしょう。そのような環境変化については、多かれ少なかれ分かっているからです。そのため、そこに「気づき」はありません。ビジョンを言葉にした情報を論理的に説明した情報も、やはり常識的なものになってしまうのです。その結果、ビジョンは社員の心に残ることなく忘れ去られていきます。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
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明治学院大学 経済学部准教授