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» 2012年02月06日 08時00分 公開

なぜ経営現場でドラッカーを実践できないのか――将来事業に予算を常時割くなんて非現実的だ!?生き残れない経営(2/3 ページ)

[増岡直二郎(nao IT研究所),ITmedia]

3つの原則

 そこには、3つの原則がある(内容については、筆者が多少手を加えている)。

 1、包括的なアイデンティティを育てているか、自問せよ(育てていれば、事業部間の相反する戦略への取り組みを受け入れることができる)。

 (1)既存の製品やサービスを包括するような、心に訴えるアイデンティティがあるか?

 (2)自社のアイデンティティは、将来失われる可能性のある顧客グループやソリューションに限定されていないか?

 2、トップレベルで緊張関係を保っているか、自問せよ(保たずに、組織の下部に押し付けていれば、イノベーションはほとんど敗れる)。

 (1)イノベーション部門はCEOに直接報告するのか?(でなければ、組織の下層でイノベーションを枯渇させることを見逃しているかもしれない)

 (2)トップがイノベーションに個人的な責任を持っているか?(答えが「全員」なら、イノベーションに責任を持っていないことになる)

 (3)最も激しい戦略上の争いが経営幹部の間でなされているか?(組織の下層に押し付けていれば、未来が縄張り争いにしばしば転嫁されている)

 3、矛盾を受け入れているか、自問せよ(コアとイノベーション両事業を支援することは、矛盾することである。逆に企業戦略が一貫していると、アイディアが枯渇し、イノベーションをコア事業部門に押し付けていて、危険な兆候である)。

 (1)イノベーション事業が既存事業と同じ基準で評価されているか?(されていれば、イノベーション事業は失敗する)

 (2)コア事業とイノベーション事業の間で、常に資源(資金、人材)を移転しているか?(していなければ、経営資源の価値を制限している)

 以上の「双面型リーダーシップ」の3原則は、サラリと通読すると当たり前のことを主張しているように思えるかもしれない。しかし、タッシュマン教授らが調査研究を重ねた結果の結論であることを念頭において熟読吟味すると、この3原則を実践する価値を見出せるだろう。

 この3原則こそ企業が業績不振などの非常事態において、将来事業に10〜20%の予算を常に割けというドラッカー理論を実行するか否か問われた時、厳しく適用することを薦めたい。その非常事態にこそ、将来事業に対する予算を簡単に切るのではなく、基本に帰って徹底して議論をし、考え抜くことが必要である。

 その方法として、トップが双面的なアプローチを取ることができれば、ビジネスの核心部分に関わる緊張関係について、前向きの厳しい議論が可能となり、企業の方針が出てくるに違いない。それは、そうそう簡単にはいくまい。しかし、尋常でない苦しみを重ねる自問と議論の中で、予算に取り組む方針を決定する貴重な手段になろう。

 もちろん、このことが常日頃実践されているに越したことはない。しかし、切羽詰った状況下で事態を座視したり、無為にやり過ごしたりするよりは、厳しい自問と議論を重ねながら、改めて従来の経営のあり方を反省し、将来の経営の指針を見つけることができ、そして実行に移すことができれば、非常事態における結論を得ることができよう。

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