マザー・テレサは、評判のあまり良くない人物から、喉から手が出るほど欲しい寄付金を受け取るべきかどうか、倫理的なジレンマに悩まされる時がありました。マザー・テレサは、経営破たんしたリンカーン貯蓄貸付組合の元CEO、チャールズ・キーティングから100万ドル以上の寄付金を受け取ったり、「べビー・ドク」の愛称を持つタヒチの抑圧的な元独裁者であるジャン・クロウド・デュヴァリエから寄付を受けたりしたと報じられた時は、大きな批判を受けました。
しかし、インドの法律により開示義務が免除されていたため、神の愛の宣教者会は財務情報を公開することはありません。マザー・テレサは、貧しい人を助けるために必要な資金を集めるという決意を固く持ち続けました。この貧しい人々が、彼女にとっての「天使」なのです。資金があれば貧しい人の役に立つと分かっていたため、マザー・テレサは「天使」を救うために「悪魔」に恵んでもらうことを厭いませんでした。
マザー・テレサの第2のリーダーシップ原則は、倫理的決断を導く確かな基盤の必要性を説いています。リーダーには必ず倫理的ジレンマに悩まされる時が来ます。その時が来たら、まず、自分の目標を理解し、自分にとっての天使が誰であるか認識し、目標を達成し天使の役に立つには何が必要なのか理解することから始めて下さい。その次に、個人的な倫理感の根底にある原則についてじっくりと考えて下さい。そして最後に、どこで線引きをするか、決めて下さい。
非常に逆説的な事であるかもしれません、必要なモノがなにかといえば、「資金」であったわけです。目的を達するためであれば、どんな出所であっても資金には違いないわけで、時に泥をかぶるような行為もやむを得ないというところでしょうか?
マザー・テレサは心の中で、自分は貧しい人々のために尽くすのが運命であると理解していました。しかし、最初に修道女になってから神の愛の宣教者会を立ち上げる時が来たと思うまで、およそ20年間を費やしました。マザー・テレサの「ひらめきの瞬間」は、路上で死にかけている女性に出会った時でした。マザー・テレサはその女性を静養所に運びベッドを提供し、安らかで尊厳のある形で永眠できる環境を与えました。
この「シンプルな愛ある行動」がきっかけで、マザー・テレサはコルカタに死を待つ人の家を開こうと思いつきました。しかし、新しい修道会を設立する許可を得ようとしても、(地元およびローマ含め)カトリック教会からの大きな反対に遭い、何年にも渡り妨害されました。それでも、彼女の明確なビジョンと不屈の努力、そして揺るがない決意によって、正式な許可を得ることができました。
マザー・テレサの3つ目のリーダーシップ原則は、忍耐と粘り強さの重要性を示しています。どのような試みであれ、リーダーは決断によるリスクとメリットを理解していなければなりません。それには次の3つの準備を整える必要があります。
3つの目 〜 リーダーシップの原則
気持ちの準備
状況の変化に必ず伴う、感情の激しい起伏に対処できますか?
経済的準備
自分の組織の行動計画を先に進めるために必要な資金源を持っていますか? (あるいは、どこにあって、どうやって手にするか分かっていますか?)
実行する準備
自分の組織は顧客や投資家、その他の利害関係者との約束を守れますか?
何事もタイミングは大切でしょう。経営には人、モノ、金が必要であり、それらが全て揃い、うまく歯車が回るような時期を待って始める事、それができるまでじっくり待つ必要もあるのです。
人は、(2003年に列福され、福者であると宣言された)マザー・テレサは、最貧困層の人々に助けと安らぎを与えるという決意にためらいを持ったことなどないと考えているかもしれません。実際、持ったことはありませんでした―人前では。心の支えとなっていた良き相談者にあてた手紙の中で、マザー・テレサは自分の信念に疑問を持つことがよくあると書いていました。彼女は、大きな不安や神からの距離、そして、精神的な孤独を感じており、自分の核となる信念を信じられなくなっていたのです。この胸に秘めた思いは、神の愛の宣教者会がさらに成功するよう絶え間なく努力している間も、消えませんでした。
マザー・テレサの第4のリーダーシップ原則は、自分の信念に不安を持つことは、実際の所、信念にとってプラスになるということを示しています。自分が正しい決断を下して来たと信じることは大切なことですが、障害物が自然に発生する中、目標を達成できるだろうかと心配することは極めて当然なことです。
物事を進めていく上で伴うリスクをおかし、受け入れるのと同時に、不安な気持ちを認め、それに対処することが大切です。不安を解消せずにいると、大きな恐怖心に成長してしまう恐れがあります。心配する気持ちを受け止めることと、自分のビジョンを疑うこととは違います。不安な気持ちを、決意を固めるためのきっかけや指針として、正しく持つことが重要です。
恐怖を知ることで人は成長する。大半の人々は恐怖と向き合うことをできれば避けたいと願うものです。しかし自分自身が恐れを感じているという心の状態を真しに認める勇気こそが成長をもたらす大きな資源となるのではないでしょうか。
受け入れること、そして認めること、その器は、すべての状況を冷静に把握するためのスタートラインに着く大切な要素だと思います。また、リーダーにとって健全性を保つこととはとても重要であり、ものごとを見定めて、プラスに作用させていく上で欠かせないことであるといえるでしょう。
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早稲田大学商学学術院教授
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明治学院大学 経済学部准教授