「95年以降、グローバル2.0の局面において、新興国の台頭や資本市場の拡大が際だってきたが、このころ、日本企業はバブル崩壊の後始末としてリストラに追われていたために、世界の動向に十分に目が向いていなかった。やがて、グローバル3.0の時代を迎えて、韓国・台湾から強力な競争相手が現れ、さらには水平分業やサービス収入の取り込みなど、新たなビジネスモデルが台頭してきたのだ。日本企業もようやく遅れを自覚して、なんとか改革を進めようとしているが、そのスピードと変化の度合いはまだ不十分だ」(平野氏)
では、日本企業はこの遅れを永久に取り戻せないのだろうか。世界市場で苦戦しているが、各企業とも失地回復を目指して奮戦しているのではないだろうか。
平野氏は、現在グローバル企業として成功している海外企業と日本企業の違いを次のように指摘する。
「マッキンゼーの調査で、グローバル企業として成功している海外企業160社を4つのファクターで比較しているものがある。(1)イノベーションによって新しい市場をつくる(2)成長市場への参入(3)M&Aによる事業セグメントの再構築(4)従来の市場で成長を図るというファクターです。この調査の中で、ハイテク企業に絞って見てみても、結果は(2)の成長市場への参入によってグローバル市場で成果を出している企業がもっとも多く、次いで(3)のM&A戦略があげられる。(1)で成功したのは1社、アップルが該当する。(4)の方法によって大きな成長をした企業は皆無だ」(平野氏)
しかし、そうした方法は日本企業も採っているはずである。これについて平野氏は次のように話す。
「多くの日本企業も(1)(2)(3)の戦略で努力をしている。しかし、海外企業に比べて日本企業は特徴がない。(1)(2)(3)それぞれの手法を平均的に取組んでいる。一方で、例えば中国企業のレノボはIBM、NECのPC事業を取込み、徹底的にシェア獲得を目指している。だからM&A戦略も思い切ってやる。HPも、M&A戦略も積極的に行うが、不採算事業を大胆に切り捨て、事業セグメントを再構築にも取り組んでいる。SAMSUNGやLGグループは、とにかく拡大するグローバル市場へ果敢に進出して成長の果実を手に入れいている。
このように今日成功している企業は、経営スタイルや戦略に際立ったものがあり、M&Aにせよグローバル化にせよ大胆に改革を推し進め、また成長を貪欲に模索している。。他方、日本の有力企業はすべてそこそこに取り組んでおり、結果として改革が中途半端であったり、グローバル化が加速しない。このままでは、日本は過去のグローバルモデルの成功者であったが、その後の改革に遅れた敗者となってしまう」(平野氏)
平野氏はグローバル戦略において、「こうすればうまくいく」というスタンダードは存在しないと断言する。必要なのは、多様な側面から自社に見合った戦略を構築することだという。
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早稲田大学商学学術院教授
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明治学院大学 経済学部准教授