成功するための条件が次第に変化している今、グローバル市場に挑む日本企業はどのような戦略を取るべきか。
早稲田大学IT戦略研究所主催、アイティメディア エグゼクティブ協賛の第37回インタラクティブミーティングが開催された。今回のテーマは「不確実性を深める世界経済と日本企業の進むべき道」。エム・アンド・アイ代表の平野正雄氏は「グローバル経営戦略の進化」と題してグローバル市場に挑む日本企業が取るべき戦略について語った。
エム・アンド・アイ代表の平野正雄氏は、1980年に日系企業に就職し、87年にマッキンゼー&カンパニーに入社。20年間コンサルタントとしてのキャリアを積み重ね、2007年から投資ファンドのカーライル・グループで企業のM&Aなどを手がけたのち、2012年から独立、という経歴の持ち主だ。
マッキンゼー時代は1998年から2006年まで日本支社長を務めている。現在、マッキンゼー・アンド・カンパニー・シニア・スペシャル・アドバイザー、およびカーライル・シニア・アドバイザーに就任している。また、4月からは早稲田大学ビジネススクールの教授にも就任する。
平野氏は2005年以降のグローバル経済を「統合化の時代」と呼び、「いわば、グローバル3.0とでも呼べるような局面に入っている」と話す。グローバル1.0は1970年から1980年代半ばまでの製品輸出が中心の時代。そしてグローバル2.0は製造業の現地化が進展するとともに、IT革命が勃興して、新興国が台頭しはじめた時代。
そして、3.0の時代は、米国や欧州で発生したリーマンショックやユーロ危機で先進国経済に大きく揺らいだ一方でBRICsのみならずアフリカ諸国でも著しい成長が始まったという「世界経済が連結、統合化していく」時代とする。
「ナイジェリアの2001年時点での携帯電話の所有者は、4万8000人。この時点で2007年の所有者は80万人程度になるだろうと予測していた。しかし、実際には4200万人となっている。これだけ見ても、爆発的な成長が発生していることはあきらかだ」(平野氏)
グローバル経済が連結、統合化していく背景には、新興国の経済が著しく成長していく中で、貿易取引だけでなく、資本取引が拡大し、インターネットなどが通信コストを極小化させていることことがある。その結果、企業経営も伝統的な製品輸出や現地生産の時代から、ITや資本の力を駆使しながら急速に拡大するグローバル経済の恩恵を求めて、果敢に経営革新する時代に入ったのだ。
また、それぞれの会社が自社独自のグローバル化を追求する必要があり、これはかつて日本の自動車、電機、化学関連企業が一斉に海外進出し、それに呼応して部品メーカーや一部金融機関が海外に出て行った集団的な企業行動はもはや通じないと平野氏は指摘する。
「日米貿易摩擦のころのグローバル化の時代は、狭い意味での現地化、ローカライゼーションの時代といえる。国内で生産していた優れた製品を輸出していたが、各国から保護的な貿易抑制策が出てきてことにより、日本企業の現地生産は始まった。しかし、今や全世界の中がら最適な生産地、サプライヤー、そして販売拠点を見出して、スピーディにグローバル事業を展開する時代であり、場合によってはM&Aなどで現地企業を買収してでも各市場に見合った製品やサービスを開発・提供していくしかない」(平野氏)
一口に「グローバル化」といっても、成功するための条件が次第に変化していっているわけだ。平野氏によれば、世界のグローバル企業トップ500社の総売上高に占める日本企業の総売上げが占める割合は、95年では35%、2000年は21%、2005年以降は12%になっていると話す。つまり日本企業はグローバル化の質的変化にどこかで乗り遅れたと考えられる。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
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明治学院大学 経済学部准教授