職場を襲う、ジェネレーションギャップ海外ベストセラーに学ぶ、もう1つのビジネス視点(3/4 ページ)

» 2012年05月23日 08時00分 公開
[エグゼクティブブックサマリー]
エグゼクティブブックサマリー

X世代

X世代とは、1966年から1980年の間に米国で生まれた人を指します。その人口は4900万人で、人口が最も少ない世代です。経口避妊薬と女性運動の広まりによって、X世代の親であるベビーブーム世代は、子どもを産む時期が遅くなり、子どもの数も少なくなりました。

 X世代の標識には、携帯電話の登場、チャレンジャー号爆発事故、ベルリンの壁の崩壊、湾岸戦争、ベビーブーム世代初の大統領であるビル・クリントンの当選、インターネットバブルなどが挙げられます。また、セサミストリート、ウェインズ・ワールド、MTVなどのテンポの速いエンターテイメントによって、「学びは楽しくなければならない」ということを学び、仕事にも同じことを求めるようになりました。グループの標識には、エクソシストやキャリーなどの「アンチチャイルド(子供嫌い)」映画が挙げられます。

 両親が共働きをしているため、学校が終わったら自分達だけで時間を過ごす、いわゆる「鍵っ子」であったことは、X世代に多大な影響を及ぼしています。彼らは今、在宅勤務、フレックス制、非常勤、テレコミューティング、仕事分担を重要視しています。

 また、結婚を長く続け、両親よりも子どもの数が多いです。家族の時間を大切にし、残業や休日出勤を好みません。彼らのベビーブーム世代の親は1990年代初頭に行われた大規模なレイオフによって「生涯の仕事」を失いましたが、それが原因でX世代は雇用主に対する従来のような忠誠心を持っていません。彼らは1人で仕事をすることを好み、「くだらない規則」や年功序列という概念を疑問視しています。

 X世代を管理する際は、彼らに何を期待しているのか伝え、ツールとトレーニングを提供し、彼らの邪魔にならないようにしてください。彼らは肩書や階級よりも達成感を大切にします。チームに属していても、個人プレーを好み、自分で最善だと思う目標を達成する自由が欲しいと思っています。能力に基づいて出世させ、賃金を支払うことを彼らに対する報酬にしてください。彼らにとって「職の安定」とは、新しい仕事を手に入れる能力を持つことです

 。しかし、トレーニングを重要視するため、X世代にトレーニングを提供する企業の離職率は低くなっています。また、X世代は社内ポリティックスを理解できません。困難な状況に立ち向かうことやペースの速い環境を好み、仕事は楽しみたいと思っています。X世代の管理者は、自分達が管理されたいと思っているやり方で、ベビーブーム世代や伝統主義世代を管理します。

 他人との共生よりも、個を尊重するのがこのX世代といえると思います。自分をいかに引き立たせるか? 自分の価値観を重視しているわけですからこの世代の人には仕事を楽しめる環境を与えることが重要です。

Y世代

 1980年から1995年の間に生まれた世代をY世代と言います。その数は米国の人口の26%を占める7040万人で、第二次ベビーブームといわれています。世代標識は、オクラホマシティ連邦政府ビル爆破事件、O・J・シンプソン裁判、コロンバイン高校銃乱射事件、2001年の同時多発テロ、テロ攻撃、イラク侵攻、バージニア工科大学銃乱射事件などです。

 ベビーブーム世代である過保護な親にY世代は甘やかされて育てられました。その親は今、Y世代はなぜ自分の責任を自分で取ろうとしないのかと不思議に思っています。Y世代は自尊心が高く、高い教育を受けているため、一般的に優秀な従業員になりますが、明確な説明や支持を必要とすることがしばしばあります。

 彼らにとって、テクノロジーは当たり前の存在です。豊かな1990年代に育ち、2000年のインターネットバブルを経験し、2008年の景気後退を乗り切ったことから、彼らは職の安定を強く望み、X世代とは異なり、1つの組織の中で出世したいと思っています。また、仕事仲間と親しくなりたいと思っており、仕事と私生活を区別せず、企業が提供するボランティア活動を通して社会貢献がしたいと思っています。

 米国の労働者の35%がY世代で占められています。彼らが職場で親密でありながらプロ意識を保った人間関係を築けるよう、手助けしてください。新しいプロジェクトを説明する時や、完了した業務を確認する時には、悪い報せを耳障りのいい言葉で誤魔化してはいけません。正直になってください。また、彼らは無意味な規則をひどく嫌うため、もし仕事中にイヤフォンで音楽を聞いても差し支えないのであれば、それを許可してください。

 さらに、彼らの上司は「一時的な代理の親」になることがあります。なぜなら、彼らは上司に心配し、教育し、成功できるようサポートし、責任能力があり信頼できる大人になるために学ぶ手助けをしてほしいしいと思っているからです。上司として彼らに何を期待しているのか、その理由も含めて説明してください。何事も具体的に述べ、期限があるならはっきりと伝え、質問がないかたずねてください。頻繁に、もし可能であれば毎日、フィードバックを提供してください。Y世代は、定期的に自信を付け、コーチングと支持を受ける必要があります。

 現代のテクノロジーが生まれた時から存在し、豊かな生活を当たり前と思っているのがこの世代の特徴です。競争よりも共生を願っているのです。それゆえに、この世代の上司は、ある意味で、組織の中での親代わりが求められると言ったところでしょうか?

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