5世代の従業員は、どのようにして米国の職場を形づくっているか? 世代それぞれの強みと限界を認識し管理する方法とは。
この記事は、洋書配信サービス「エグゼクティブブックサマリー」から記事提供を受け、抜粋を掲載したものです。サービスを運営するストラテジィエレメントのコンサルタント、鬼塚俊宏氏が中心となり、独自の視点で解説します。
この要約書から学べること
米国の歴史上、5世代に渡る年齢層の従業員が同じ職場で働くというのは、初めてのことです。ここでいう5世代とは、1945年以前に生まれた「伝統主義世代」から、1995年以降に生まれた最も若い「リンクスター世代」までのことを指します。この2世代の間に、「ベビーブーム世代」、「X世代」そして「Y世代」がいます。
世代問題の専門家であるX世代のミーガン・ジョンソンと、ミーガンの父親であるベビーブーム世代のラリー・ジョンソンは、複数の世代を管理するための革新的な管理モデルを提供しています。その中には、彼ら自身の個人的および仕事上の経験が実例として紹介されており、主張や比較がなされています。
彼らの研究は米国に限定されたものではありますが、米国以外の国で活動する管理者も興味深い本書から有益なアイディアを吸収することができるでしょう。世代間ギャップの橋渡しをしたいと願う全ての管理者や従業員に本書をお薦めします。
日本では特に顕著なことなのかもしれませんが、個の文化が尊重され、価値観の多様化が進んだおかげで、核家族化がもはや当たり前の現状となっている以上、あまり他人と必要以上に関与しないことが風潮になっています。そうした実態は、同世代の人とのみならず、他の世代の人と日常生活の中でコミュニケーションを取ることがもはや皆無に近い状態となっていることはもはや否めない事実であり、同時に、企業という組織の中では全く異なる昔ながらの世界が展開されていることも間違いありません。
日本においては定年制が敷かれている会社が多く55歳、または60歳まで企業で働くことはごくあたりまえでしょうし、また、経営者、役員ともなれば、自分が引退しない限りは生涯現役として働くこともあり得ます。つまり、人が義務教育を終えて(日本の場合は、ほとんどが高等教育かそれ以上を受けることを考えれば、)18歳から60歳近い年齢の人が、同じ組織の中に構成されているということになります。
つまり、10年を一世代と考えれば、5世代の幅のある人たちがともに働いているということで、これは歴史のある企業であればどこでも同じことがいえるのではないでしょうか。このことから、企業組織にとって目的を達成する際、世代の違いが生み出すメリット、デメリットを相互に分かり合うことが大変重要なことであるといえます。
本書「職場を襲うジェネレーションギャップ」ではそうした世代の違う社員をどのようにコントロールすることによって会社を一つにまとめていけるかということに焦点を絞った一冊になっています。それぞれの世代の人がどういう思考で仕事をしているのか、それぞれについて言及をしながら、どのようにしたら彼らのモチベーションを上げることができるかについて書かれています。それゆえに、この書は、歴史の古い大企業の管理職や経営者の方には特に読んで欲しい一冊と言えるでしょう。
今、米国の職場では5つの世代の従業員が一緒に仕事をするという現象が起きていますが、これは歴史上初めてのことです。5つの世代とは、「伝統主義世代」「ベビーブーム世代」「X世代」「Y世代」そして「リンクスター世代」のことです。世代ごとに特性が異なるため、雇用主や管理者がそれぞれの世代に対して抱く認識も異なります。管理者はこの5世代を、グループと企業全体の最善の利益のために1つにまとめなければなりません。それぞれの世代には、次のような世代を特徴づける一定の「標識」があります。
5世代を統制する一定の標識とは?
・個人およびグループの標識
個々人や同世代の人々に起きた出来事は、いつまでもその人自身や仕事に影響を与え続けることがあります。グループにとって、このような標識には、例えば、人種や性別などの特定の人口特性に対して、自分をどのように認識しているか、あるいは関連性があると思っているか、が挙げられます。
・世代の標識
ある特定の歴史的出来事によって、他の世代よりも影響を受ける世代がいます。例えば、ベビーブーム世代が受けたウッドストック・フェスティバルの影響がその1つです。
・「当たり前のこと」
物心が付く前に起こったことで、その人の人生に大きな影響を与える出来事があります。例えば、X世代やY世代の人達は、平等な社会しか知らないため、学校で人種差別を経験したことがありません。
5世代が同じ職場で働くという現象は、日本も米国も同じことです。確かに、発想が違うことも共通の事であって、それをどうまとめるかが課題であることも同じです。まずはここに書かれている3つの項目に照らし合わせてそれぞれの世代の人の成長してきた環境や歴史を理解することから始めると良いでしょう。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
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株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授