失敗はもがき苦しんだり、自分は正しいと主張したりするもではなく、進化を後押しするものだ。柔軟な思考がビジネスや人生に変革をもたらす。
この記事は、洋書配信サービス「エグゼクティブブックサマリー」から記事提供を受け、抜粋を掲載したものです。サービスを運営するストラテジィエレメントのコンサルタント、鬼塚俊宏氏が中心となり、独自の視点で解説します。
この要約書から学べること
信じられないほど複雑で相互に絡み合った現代世界の複雑な問題を解決することのできる、唯一のシンプルな策など存在しません。経済学者であるティム・ハーフォードは、「進化」つまり、斬新的適応変化は、「大変革」よりもはるかに多くの成功を生み出すことを理解しています。示唆に富む本書の中で、ハーフォードは複数の分野の事例を紹介し、物事の実際の機能の仕方と人間が考える機能の仕方のギャップを埋めています。
また、趣向が凝らしてあるため、読者は飽きることなく読み進めることができます。ハーフォードの提唱する複雑な問題に対処する方法を、より明確に物事を考えたい人、自分のやり方を見直したい人、そして、将来の計画を立てたい人にお薦めします。
どのような企業においても業務の専門性を問わず力を発揮するマルチプレイヤータイプの従業員が存在します。このような従業員は、あらゆる場面で部署を越えたピンチヒッターの役割りを果たすことができ、企業にとっては大変重宝される存在です。反面、このタイプの多くは、一つの専門分野に特化し卓越した能力を保持しているという訳ではないため、具体的な知識に乏しくやや説得力に欠くというケースも少なく在りません。
しかし、その価値は、企業にとっていかに貢献しているかどうかであり、結果がすべてを語るものです。また、どのような従業員にも少なからずウイークポイントはあるため、このタイプのように柔軟な思考で状況を判断する能力や的確に物事を洞察する能力を持ち合わせているという特徴は、多少の欠点があるにしても、大変魅力的なものです。また、このタイプは、いかなるウイークポイントを一蹴するほどの問題解決力に長けているため、職場で生き抜いていく逞しさにも目を見張るものがあります。
もちろんそれは、伴った結果へと直結するため、大きくは企業貢献となります。特に専門的な知識と経験を保持したマルチプレイヤータイプの従業員である場合は、組織のリーダーとして十二分な資質を持ち合わせているため、どのような組織でも必ずリーダーとしての頭角を現す存在であるといっても過言ではないでしょう。
本書の著者、ティム・ハーフォードは、経済学者とジャーナリストという両側面の立場と自らの多彩な経験から数多くの事例を用いて、従業員が職場で効率よく働ける術を細かく解説しています。そして本書「適応」は組織と自分の進化を成功へ導く地図のようなものです。
柔軟な思考が、いかにビジネスや人生に変革をもたらすかということを力説している本書を、仕事をしているすべての人にお薦めします。
例えば、トースターのように安価で広く普及している製品ですら、信じられないほど複雑に作られています。トースターを1台作るためには、さまざまな分野の専門技術を必要とします。また、平均的な量販店では、そのような製品が10万点も販売されており、それだけでも複雑さが想像できると思います。現代の社会で製品を作るには、あらゆる意思決定において複雑な力が相互作用します。そして、その力はすべて、継続的に進化する変化に対応するものでなければなりません。
変化そのものは、問題のある複雑性をさらに深めます。1982年、トム・ピーターとロバート・ウォーターソンは、超優良企業について研究し、「In Search of Excellence(邦題:エクセレント・カンパニー)」という著書でその企業を模範企業として紹介しました。
しかし、それから2年も経たない内に、紹介された43社のうち14社が深刻な財政難に陥りました。このように、素晴らしさはいつまでも続くものではありません。よって、生き残るには、変化する状況に慣れ、自ら進んで適応し、実験することが求められます。これらはみな、進化するために必要な要素なのです。
企業が生き残るために必要なことと超優良企業であり続けるために必要なことには共通事項があります。一言で言うと、状況の変化に自らが率先して慣熟することにあります。つまり、物事に適応するためにいかに自分自身が速やかに変化することができるかにあるようです。また、変化とは完結するものではなく、継続することで、その効果は顕れるものだと言えるでしょう。
企業の組織図は、広く信じられているリーダーシップの理想的なあり方を体系的に示したものです。このような理想の組織図の中では、すべての情報がリーダーに流れ着き、リーダーは、教育を受けた支援チームの助けを借りて、物事を見通す力と優れた判断力を持って適切な判断を下します。そして、リーダーの下した決断は現場の従業員へ届けられます。
この組織図の問題点は、機能しないということです。優秀なリーダーなどほとんど存在しませんし、例え優秀であっても、毎回必ず適切な判断を下すことはできないからです。ナポレオンは無敵の将軍でしたが、ロシアを侵攻した時には50万人いた部下の9割以上を失いました。このように、最も優れたリーダーですら過ちを犯すのです。そのため、どの組織も、リーダーの過ちを正すプロセスを持っている必要があります。組織は、迅速に変化を起こす能力と、標準的なビジネスからの逸脱を理解し検討する能力の間で綱渡りをしなければなりません。
いかに優れたリーダーであれ、完璧ではないということが記されています。ここで重要な点は、組織=コミュニティであると言うことです。理想的な組織を構築したいと考えるならば、まず、現実を直視し、現在の問題点を組織の一人一人から声を拾い集め皆で良策を練るという場を持つことです。このことこそ、リーダーの過ちを正すプロセスとなるのではないかと思います。
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