組織が研究に投資する時、組織のリーダーは、投資額に対して自分達が何を手に入れられるのか知りたいと思います。しかし、新しい分野における「結果の漠然とした研究」では、投資収益率を見積もることはできません。実際、発明のほとんどが失敗し、独創的アイディアのほとんどが使い物になりません。例えアイディアが実行可能なものであったとしても、投資収益率を見積もることは難しいことです。
最も有望な新しいアイディアを特定し、それに力を注ぐのではなく、進化から学んで下さい。「ダーウィンの進化論」で有名な自然科学者のチャールズ・ダーウィンがガラパゴス諸島で行った野生生物の観察から分かったように、自然は一度に可能な限り多くの変種を生息させることで、生き残るための解決策を見つけます。このように変種を生むことは、変化する環境に適応するための自然の手段です。適応に成功したものだけが生き残り、失敗したものは死滅します。
これは、組織内においては、新しいアイディアを探す中で実験する人間を保護することを意味します。社会においては、社会システムの中で革新を支持しようとすると、本当の革新はほぼ確実に生まれないことを意味します。例えば、米国立衛生研究所などの機関からの助成金は、最も成功する可能性が高いプロジェクトへ送られます。つまり、滅多にない飛躍的な発明を期待してリスクを冒すのではなく、失敗を避けるために支払われているのです。
その反対に、ハワード・ヒューズ医療研究所(HHMI)は、自分達の研究が何をもたらすのか事前に明言できない、しかし鋭い洞察力を持った個人を支援しています。HHMIは、「説得力のある努力の兆候」を基準に、支援しているプロジェクトを評価しています。調査によると、HHMIの手法の方が、より革新を生み出していることが分かりました。結果を予測するという負担から、優秀な従業員を解き放って下さい。そして、彼らにアイディアを実験する時間と資金を提供してください。
企業の「生き残る」というミッションは絶対的に揺るがないものです。つまり、実際のところ革新的なアイディアより堅実なアイディアを重要視することに企業は価値を見出します。これは、経験から学習した一つのデータベースだと考えられます。しかし、革新にはトライアンドエラーが付き物であるため、それが、どのような説得力を示すものかによってその価値は左右されます。そのため、従業員個々の持つアイデアを実践の中でモニタリングできるような環境が、今後の企業運営には必須とされるのではないかと思います。
新しいアイディアを生み出すことは、進化における適応の原則の1つで、必要不可欠なことです。しかし、新しいアイディアを生み出すだけでは十分ではありません。あらゆる状況でも機能するアイディアなど存在しないため、特定の状況下でどのアイディアが機能するのか、見極める必要があります。経済学あるいは社会科学において、変化のはっきりした原因を突き止めることは難しいことです。
なぜなら、常に考えられる原因が複数存在するからです。さらに、例えば、研究者は、経済や気候、社会に関する実験のパラメーターを管理することができないからです。実験対象が多すぎますし、それぞれが独立しています。複雑なもので溢れる中で指揮するには、予測も予想もできない状況に適応する方法を学ばなければなりません。
ほぼ常にリソースには限界があるため、複数のアイディアの中から選ぶ方法を見つけなければなりません。グラミン銀行を創設したマイクロファイナンスのパイオニアであるムハマド・ユヌスは、「女性の視点」を取り入れ、人間関係が最も親密な貧困層で経済的解決策がどう機能するか見ようとしました。」
また、薬剤の試験に科学的手法を使うことを支持したスコットランド人の疫学者、アーチー・コクランは、第二次世界大戦中、捕虜収容所で人への対照実験を試みました。対照実験は倫理的問題をはらむ可能性がありますが、それ以外の方法は、何も分かっていない人に「非対照実験」を行い、失敗した手法に固執することだとコクランは主張しました。
一度に全体的な問題を解決しようとするのではなく、狭い範囲を向上させるために小さな実験を数多く行うことが選択肢の1つとして考えられます。他の選択肢は、問題と解決策を示すもっと良い方法を見つけることです。例えば、ハーバード大学国際開発センターの研究員であるセサル・イダルゴは、国同士の貿易に関するデータを可視化する新しい方法を考えました。
それによって、人々は、さまざまな国が新しい市場カテゴリーに取引を拡大する方法と時期を知ることができるようになりました。この可視化によって、拡大に対する政府の資金援助は多くの場合失敗に終わることが示されました。失敗の原因は、政府が規模は大きいけれど失敗する組織に投資する傾向にあり、投資の本当の結果をほとんど理解していないことにあります。トップダウン式の変化に頼ることは、多くの場合、経済的な失敗につながります。
進化にはアイディアが必要であるということが分かりました。そして、進化するためには、女性の視点を取り入れてみることも良策だと言うことです。また問題を解決するには課大範囲を狭め、小さな実験結果をどのように進化へと反映させることができるかにあるのではないかと思います。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
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明治学院大学 経済学部准教授