できる人は指示をせずになぜを語る――WhatよりもWhyをグローバル時代のスマートリーダー術――100人の経営層から(1/2 ページ)

近年行動経済学が注目されているが、例えばものを購入すると際、合理性ではなく感情が絡むことが多々ある。「何か分からないけれど、なんとなく引かれる」そう感じるとき人は行動に移すのではないだろうか。

» 2012年06月21日 08時00分 公開
[林正愛(アマプロ),ITmedia]

 世の中で大きな成果を上げている企業とそうでない企業があり、成果を出している人と成果を出していない人が存在します。人はなぜ○○の会社の商品を買いたいと思うのでしょうか、なぜ○○さんについていくのでしょうか。

 それは「なぜを共有する」ことで、自分が信じていることをその人が信じているからです。「What(何)」ではなく、「Why(なぜ)」を語り、それに共感しているからです。

成功する組織とそうでない組織を分ける黄金ルール

 何かを販売するときに次のようなメッセージを見かけます。

1、わたしたちは○○を作っています。

2、これによってあなたは○○を実現できます。

3、だから○○を買ってください。


 このようなメッセージを見て、本当にそのモノを買いたくなるでしょうか。社内で指示を出す際にはどうでしょうか。

1、○○ののキャンペーンを行います。

2、週2回ずつお店を回り、お店の人と話をします。

3、売上○%アップを目指します。


 これで人は動いてくれるでしょうか。これは以下の順序で進んでいます。

 What → How → Why

 人を動かすにはこのやり方では通用しません。この逆が必要なのです。

 Why → How → What

 What(何をつくっているか)は、わたしたちはほとんどの人が分かっています。How(どうやるか)は何人かの人、いくつの会社は分かっています。価格で差別化するとか、奇抜なマーケティングをするなどです。しかし、Whyを語り、共有できている企業はごくわずかです。

 Whyはあなたやあなたの組織の信念であり、なぜあなたの組織は存在しているのか、あなたの製品はなぜいいのか、なぜみんなが注意を払うべきか、ということです。

Appleが成功する秘訣

 iPhone、iPadなど数々のヒット商品を出すApple。彼らはなぜ成功しているのでしょうか。彼らは次のように言います。

わたしたちがやっていることはあらゆることが現状にチャレンジすると信じています。現在と違う考え方をすることを信じています。

多くの人に使ってほしいので、わたしたちはビューティフルにデザインし、使うのが簡単で、ユーザーフレンドリーにしました。

そして、コンピューターを作りました。一つずつ丁寧に。


 買いたくなるのではないでしょうか。次のように言われたらどうでしょうか。

わたしたちは素晴らしいコンピューターを作ります。

ビューティフルにデザインされ、使うのが簡単で、ユーザーフレンドリーです。

だからわたしたちの製品を買ってください。


 この商品を買いたくなるでしょうか。これは多くの企業やリーダーたちが行っていることです。

 「これがわたしたちの新しい車です。最新のナビシステムが搭載され、革張りの快適な椅子を用意しています。だからこの車を買ってください。」これでは人は引かれません。人が引かれるのはものではありません。「なぜ作るのか」に賛同するから購入し、会社の「なぜ」に賛同するからその会社の製品を買い、一つだけではなく他の製品も買うのです。

 人は、数字や事実を見せられても何も感じません。「なぜか分からないけれど引かれない」そのような状況になるのです。近年行動経済学が注目されつつありますが、ものを購入するという意思決定の際には、合理性ではなく感情が絡むことが多々あります。

 「何か分からないけれど、なんとなく引かれる」人は感情を持つ動物だからです。ゴールは人々にあなたが持っているものを売ることではありません。ゴールはあなたが信じることを彼らも信じることです。

 人を雇いたいとき、ゴールは仕事が欲しい人を雇うことではありません。あなたが信じていることを信じる人を雇うことです。仕事が欲しいというだけの人を雇うと、お金だけを求めます。信じている人を雇うと、あなたと一緒に汗水流して夢を実現するために働きます。

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