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» 2012年06月21日 08時00分 公開

グローバル時代のスマートリーダー術――100人の経営層から:できる人は指示をせずになぜを語る――WhatよりもWhyを (2/2)

[林正愛(アマプロ),ITmedia]
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小さな組織でも「なぜ」を共有する

 私事ですが、弊社は会社を立ち上げて6年目になり、外部ともいろいろと仕事をしています。会社を立ち上げて3年目の頃、人手が不足し、新たに人を雇おうと考えました。外部のスタッフとして仕事を一緒にしてきて、とても活発で元気な人がいて、彼女に「手伝ってくほしい」と頼みました。快諾してくれたので、まずは3カ月はアルバイトとして手伝ってもらい、その後正式に採用しようと考えていました。

 彼女が毎日会社に来るようになり、「今日は○○をやってください」「明日は○○にわたしと一緒に行きましょう」など細かに指示を出し、1日の終わり、週の終わりには進捗の報告を受け、「それでは明日はこれをしましょう」「来週は○○に行きましょう」と決めていました。仕事自体はきっちりとこなしてくれ、やるべきこともやってくれていましたが、2カ月が経ったとき、彼女が言いました。

 「この2カ月いろいろ経験できましたが、わたしはライターの仕事をしたいので、社員として働くのは遠慮できないでしょうか」元気に仕事をこなし、楽しんでいるようだったので驚きましたが、その時はたと気づきました。彼女はそれまではライターという立場で、外部スタッフとして弊社の仕事をしてくれていたのですが、わたしの会社でなぜ働く必要があるのか、なぜこの仕事をするべきなのか、それを共有できていなかったのです。ある程度の期間、本当に小さな所帯で、外部とはいいながらスタッフとして働いていたので、そんなことを言わなくても分かっているだろうと思っていました。それが大きな誤りでした。

 組織の大小にかかわらず、「なぜ」を共有すること、それがとても重要なのです。わたしの組織の場合、コミュニケーションや情報発信を通して企業の成長をサポートする。なぜならば、情報発信が不十分な企業があり、定期的な情報発信をしコミュニケーションをとらなければ、企業は成長、存続できなくなっているからです。適切なコミュニケーションを通して、日本全体を元気にしたい、そんな思いもあります。

 しかし、思いを共有できていなかったので、彼女は何のために指示されている仕事をするのかが分からず、思い悩みました。自分が信じていることを語る、なぜやるのかを語る、夢を語る。それに賛同した人は、その会社のために働くのではなく、自分のために働きます。自分事化できたときファンになり、商品を買ってくれたり、自分についてきてくれます。

炎天下で25万人を集めたキング牧師

 米国の公民権運動の指導者として活躍したマーティン・ルーサー・キング・ジュニア牧師。有名な「I have a dream」スピーチをワシントンで行い、真夏の炎天下にもかかわらず、25万人も集まりました。インターネットもなく、招待状が出されたわけでもありません。しかし、なぜそれだけの人が集まったのでしょうか。しかも、人種差別を訴えていた人は他にもたくさんいたのです。

 それは自分が信じていることを話したからです。「I believe」と説いてまわりました。彼の話を聞いた人が、自分が信じていることを周りの人に話してまわり、それによって広がりました。そこに集まった人は彼のためではなく、自分のために、アメリカの未来のために8時間以上バスに乗って、真夏の暑い中集まったのです。

 キング牧師は「I have a plan」 スピーチではなく、「I have a dream」スピーチを行いました。人を率いる人は人をインスパイヤします。組織であろうと、個人であろうと変わりません。できる人は指示をせずになぜを語ります。Whyから始める人や組織が周りをリードし、インスパイヤし、その人がさらに周りの人をインスパイヤしていくのです。

 これまで、「グローバル時代を生き抜くスマートリーダー術――100人の経営層から」というテーマで話してきましたが、経営層以外に、大学院で学んだり、いろいろな方に出会い体験し、また、会社を経営している中でグローバル時代に一人ひとりに必要なことについて感じることがあります。次回からは、「グローバル時代を生き抜くスマートリーダー術」というテーマで、新しい連載として感じたこと、身につけたことを話ししていきます。

※本記事はサイモン・シネック氏の講演「優れたリーダーはどうやって行動を促すか」を参考に著者の考えを加えたものです。

著者プロフィール

林正愛(りんじょんえ)

BCS認定プロフェッショナルビジネスコーチ、ファイナンシャルプランナー、英検1級、TOEIC955点。津田塾大学学芸学部国際関係学科卒業。British Airwaysに入社し、客室乗務員として成田―ロンドン間を乗務。その後中央経済社にて経営、会計関連の書籍の編集に携わった後、日本経済新聞社に入社し、経営、経済関連の書籍の企画および編集を行う。2006年4月に退職し、「眠っている才能を呼び覚ませ」というミッションのもと、優秀な人たちが活躍する場を提供したいという思いから、同年10月にアマプロ株式会社を設立。仕事を通じて培ってきたコミュニケーション力や編集力を活かして、企業の情報発信をサポートするために奔走している。

企業の経営層とのインタビューを数多くこなし、その数は100名以上に達する。その中からリーダーの行動変革に興味を持ち、アメリカでエグセクティブコーチングの第一人者で、GEやフォードなどの社長のコーチングを行ったマーシャル・ゴールドスミス氏にコーチングを学ぶ。現在は経営層のコーチングも行う。コミュニケーションのプロフェッショナルが集まった国際団体、IABC(International Association of Business Communicators) のジャパンチャプターの理事も務める。2012年4月から慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科で学んでいる。著書『紅茶にあう美味しいイギリスのお菓子』(2000年、アスペクト)。2児の母。


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