続けた人しか成功しない――対話を継続するグローバル時代のスマートリーダー術――100人の経営層から(1/2 ページ)

価値ある情報を発信し、対話をする企業や人を応援したいと思い、その企業の商品やサービスを利用したいと考えるようになる。継続は力なり。

» 2012年03月16日 08時00分 公開
[林正愛(アマプロ),ITmedia]

 「グローバル時代を生き抜くスマートリーダー術」というテーマで、前回は「不快感を与えずに人を動かす――アサーティブ」について話しました。今回は「対話を継続する」ということについて話します。

出し続けたメルマガが生んだ「奇跡の12月」

 「コミュニケーションで成功する秘訣はありますか?」と聞かれることがあります。そのようなものがあればいいのですが、残念ながらそういうものはありません。あるとしたら、「対話を継続すること」です。

 情報化社会が進む中で、あらゆるものをインターネットなどで簡単に調べられるようになっています。現在は、ストーリーがある商品やサービスが売れる時代です。そんな時代に必要なのは、自ら情報を発信し、対話をすること。その情報とは、単に自分を売り込むものではなく、受け取った人が役立つ内容や価値ある情報を提供することが不可欠です。

 人々は、価値ある情報を発信し、対話をする企業や人を応援したいと思い、その企業の商品やサービスを利用したいと考えています。一方で、組織に属する人たち全員がフィロソフィー(哲学/理念)を共有し、同じ方向を向いて仕事に取り組まなければ、企業は成果を残せない時代になっています。企業内のコミュニケーションを円滑にすることが、組織の成長には欠かせなくなっています。

 ある経営者が行ったエピソードを話します。

 彼は社員や自身が関わるすべての人に毎週メルマガを出し続けました。読者は3000人以上にのぼったそうです。そのメルマガには仕事や業務のことももちろん書きますが、最近のニュースについて自身が思うこと、日々感じたことをエピソードを交えながら書いていました。そのメルマガを受け取っている関係者が「毎週楽しみにしているのですよ」と言っていました。

 ある年の12月。その会社の決算は12月です。その年11月まではなんとかギリギリのペースで業績目標を達成して進んでいたのですが、12月に突入したとたんに、急に失速。12月の半ば時点では、どのような楽観的なシナリオをもって予測しても、目標達成は絶望的な状況に陥りました。そのことを営業推進部長から説明を受けたとき、これではいけない!と彼は動き出しました。ただし、不思議と悲観的になることはなかったそうです。

 その年自分自身の頭の中で目標が達成できないということを微塵もイメージしたことがありませんでしたし、それこそ毎週のメルマガで「大丈夫だ、大丈夫だ、絶対に目標は達成できる!」と現場を鼓舞し続けていたからです。どんなに厳しい見込みを見せつけられても「いや、逆転してみせる。絶対に目標を達成できる」と信じている自分がいました。

 ただし、その報告を受けてからは、手紙に電話に訪問など、やれることは全部やりました。現場からの要請で電話を入れたり、激励のFAXを流したりと、もう大騒ぎでした。 今年も終わるな……と思っていたら、もう1度戦場に連れ戻して闘ってもらうわけですから、毎日が選挙運動のような展開でした(笑)。

 年末に近づくにしたがって、オセロゲームのように、ボードに張り出した真っ黒な丸が真っ白にどんどんとひっくり返っていきました。そこでわたしは手ごたえを感じていましたが、年末の最終営業日の朝の時点では、まだまだ目標にはほど遠い状況でした。

 結局、除夜の鐘を聞くまで会社にいることになりましたが、最後の最後まで取り組んだ結果、年が明けて集計結果が出たら、驚異的な数字が入っており、年間目標を達成していました。あの一体感の連鎖、あきらめていた人たちの目がイキイキと変わってくる、そのワクワクドキドキ感、そして奇跡の逆転勝利を成し得たことの喜びは最高でしたね。

 今でも「奇跡の12月」と呼んで、胸を熱くしています。


 目標達成が厳しいと分かったとき、彼は手紙、電話、FAXに、訪問とありとあらゆる手段を尽くしました。しかし、そのような彼の激励になぜみんなは応えたのか。やはり毎週メルマガを送り、自分のメッセージを定期的に発信し続け、自分のことを分かってもらい、自分のファンを増やしていたからです。だからこそ、彼が頑張ってほしいと訴えたとき、多くの人が頑張らなければと思い、ついてきてくれたのです。

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