漁業者に収入とやり甲斐をもたらした流通革命の秘訣は、長年築いた信頼関係にあった。
最近スーパーに行っても、同じような魚しか見られなくなったと思いませんか? そしてパックに入った切り身が多い。身近に感じるこうした変化の背景には、日本の漁業の構造的な問題があるのです。
水産王国ニッポンの漁獲生産量はかつて世界一で、1984年には1282万トンありました。しかし2005年には世界6位になり、2006年にはピークの半分以下にまで落ち込んでいます。
漁獲生産量減少の原因の1つは、漁業資源の枯渇と言われています。高度成長期から現在に至るまで、埋め立てや干拓で日本の前浜(※1)はつぶされ続けてきました。1989年から工事が行われ1997年に潮受け堤防が閉じられた諫早湾干拓がその代表例です。
乱獲も漁業資源枯渇の原因です。例えば日本の大衆魚の代表であるサバは3歳になれば500グラムにまで成長し、3尾260円で売れる生鮮食材になります。しかし0歳で漁獲してしまうと100グラムしかないので、10尾65円でしか売らざるを得ず、養殖の餌にしかなりません。
3歳になるまで待てば3尾260円で売れることが分かっているのに、短期的な収入を得ようと漁業者が幼魚を取り合い、その結果漁業資源が枯渇するという悪循環に、日本の漁業は陥っているのです。魚群探知機などで漁獲の技術が上がったことも、乱獲に拍車を掛けています。
このようなことを繰り返しているうちに漁業者は低収入になり、国が補助金を出しています。しかしこの補助が、漁業者から自立を考える気持ちを奪っているのです。
近海で魚が捕れなくなったことに加え、排他的経済領域――いわゆる200海里が設定されたことも、漁業衰退に拍車をかけています。経済領域の中心でしか魚が捕れなくなったため海外からの輸入に頼らざるを得ない状況になり、現在では国内水産物消費量の4割を海外物が占めています。
これらの要因が重なって、ピーク時には130万人いた漁業者が現在では20万人にまで減りました。さらに高齢化も進み、日本の漁業は衰退せざるを得なかったのです。
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早稲田大学商学学術院教授
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明治学院大学 経済学部准教授