オリンピックの開会式とコンディショニング小松裕の「スポーツドクター奮闘記」(1/2 ページ)

ロンドンオリンピックがついに始まります。今回は、華やかな開会式の裏にある選手たちの苦労をお伝えします。

» 2012年07月26日 08時00分 公開
[小松裕(国立スポーツ科学センター),ITmedia]

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 今週末の7月27日、いよいよロンドンオリンピックが開幕します。

 北京オリンピックで、私は星野仙一監督率いる野球チームに帯同しました。大会期間中に川崎宗則選手やダルビッシュ有選手は坊主頭になりました。そんな連中が今ではメジャーリーグで大活躍しているのですから、4年間は長いような短いような……。

 そして、女子ソフトボールチームは悲願の金メダル、上野由岐子選手の力投がありました。でも、ロンドンではオリンピック競技から外れてしまいました。実は、ロンドンオリンピック直前の現在、カナダのホワイトホースで女子ソフトボールの世界選手権が開催されています。全日本チームを率いるのは宇津木麗華監督、もちろん鉄腕・上野由岐子投手も健在です。でも、あまり報道もされていないから、ご存じの方も少ないでしょうね。ああ無情です。やっぱり早くオリンピック競技に復活させなきゃ、って思います。(編集部注:ソフトボール日本女子は世界選手権決勝で米国を破り、42年ぶり2度目の優勝を果たしました)

選手団の本部ドクターとしてロンドンへ

 今回のオリンピックでは、私は日本選手団の本部ドクターとして帯同します。日本選手団全体が、けがや病気なく万全の体調で試合に臨むことができるように、さまざまな面からサポートするのが本部ドクターの役割です。

 オリンピック期間中には、予期せぬ医学的問題が発生します。そのような場合に備えて、選手村の日本選手団宿舎の中に、メディカルルーム、いわゆる医務室を設営します。そこに、日本から医薬品を持ち込み、ほとんどの医学的な問題点に対応できるようにします。

 そこで対応しきれない、例えば、レントゲン写真を撮らなければいけない場合や、血液検査をしなければいけない場合などには、選手村内のポリクリニックで対処します。ポリクリニックとは、選手村の中に作られた病院で、各国の選手が受診できます。最新式の検査機器を備え、各科の専門医が常駐しており、我々選手団ドクターが選手に付き添って、専門医とともに治療方針を決めます。

 出発前に準備しなければいけないことも、たくさんあります。オリンピック前に国立スポーツ科学センター(JISS)で行ったメディカルチェックの結果を確認し、医学的な問題点があった場合には、その問題点が解決されているか確認します。そして、選手全員の医学的データを選手村に持ち込み、万が一に備えます。健康のチェックは選手だけに限りません。監督やコーチなど、スタッフに医学的問題が起きた場合に備え、全員に健康調査票を配り、持病や常用薬なども確認しておきます。

 また、我々は日本の医師免許を持っていますが、イギリスの医師免許は持っていません。ですから、通常はイギリスで医療行為を行えません。そこで、あらかじめさまざまな証明書類をイギリス政府に送り、「オリンピック開催期間中に限り、自国の選手やスタッフに対しては、イギリス国内で医療行為を行ってもよろしい」という、承認をもらいます。日本から選手村に持ち込む薬品や医療機器のリストも提出し、許可をとります。

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