UXに加え、もう1つ強みとして持っているのは「信頼性」です。日立は情報系システムだけではなく社会インフラやユーザーの基幹システムも担っていることもあり、提供するものの品質には大きなこだわりがあります。
製品やサービスの信頼性はもちろんのこと、それを開発している技術者やユーザーサポート部門に対するユーザーからの信頼感も大事にしています。当社ではユーザー向けにハードウェアの製造ラインや事業所の見学会を開くことも多く、顧客から「品質へのこだわりや誇り、DNAのようなものを感じる」などプラスの評価もいただけています。
――2013年の市場展望と、それに対する日立のビジネス方針はどのようなものでしょうか。
阿部氏 2012年の国内市場は大きくは伸びませんでしたが、おそらく2013年以降も国内市場は低成長であることは間違いないでしょう。一方、グローバル市場は年率数%で確実に伸びると各調査会社が予測しています。こうした中、ITプラットフォーム事業がグローバルで勝負するのは必然だと考えています。
当事業本部では海外の売り上げが大きな割合を占めており、その中心はストレージ製品です。そこで今後は、グローバルで持っているストレージ販売基盤を活用し、いかに他の事業分野も拡大させるかという点にチャレンジしていきます。
具体的には、中国やインドを中心としたアジア市場をターゲットとしていきます。特に中国市場では、2012年にシステム運用管理製品の「JP1」が立ち上がり始めました。なぜかというと、中国での人件費が上がり始めたのです。従来はJP1などの自動化ツールを売ろうとしても「人手があるからいらない」と言われていたのが、今では人を減らしてでも自動化したいとか、従業員の残業を減らしたいというニーズに変わり始めました。
こうした海外市場に事業部単体で出ていこうとするとハードルが高いですが、中国では日立建機をはじめ、日立グループ全体として既にうまくいっている地盤があります。そうした地盤を活用することで、ビジネスの確実性を高められるのではないかと思います
――グループ全体の地盤が、IT市場でも競合他社に対する差別化につながるということですね。
阿部氏 そうですね。もう1つは「スマートシティ」への取り組みです。既に海外でいくつもの先進的なプロジェクトがスタートしています。特に、都市化や人口増が急激に進む中国では、スマートシティに取り組むスピードも非常に速い。いわば、都心の交通網を全部電気自動車にして、そのステーションの構築から管理までを一括して進めていくような動きが出てきています。
当社は「ITと社会インフラの融合」を事業方針として掲げてきましたが、スマートシティを通じてまさにそれが形になってきました。ITから社会インフラまで全てを提供できる点が、他のITベンダーよりも1歩先に行っているところではないでしょうか。
――日立製作所および阿部氏にとっての「負けない力」とは何でしょうか。
阿部氏 挑戦する気持ちですね。オフィスの入口に掲げている「挑」という文字、あれは2012年の正月にわたしが書き初めとして書いたものです。
わたしは宮城県石巻市の出身です。東日本大震災の被災地の様子を見て「今やグローバル企業である日立も出自は日本だ。やはり頑張らなければ」と強く感じました。今までもいろいろなことにチャレンジしてきましたが、こういう時こそ日立のような企業が社会に貢献する必要があると思いを新たにしています。
当社は50年近く前に「みどりの窓口」のシステム開発に携わったり、銀行のオンライン化などに取り組んできました。このように、社会の礎になっているものをいたるところで日立が支えています。
中西(宏明)社長の年頭所感で「サステナブル(持続可能)な社会実現への貢献」というキーワードがありました。今後はそういう点に対して一層注力する構えです。グローバルで人口問題や資源問題などがある中で、世界に対し責任をもって臨み、持続可能な社会づくりに貢献していかなければと思っています。
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【入会条件】上場企業および上場相当企業の課長職以上
早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授