現在は物事が複雑に絡み合い、入り組んでおり白、黒はっきり分けるのが難しい時代だ。「静かなリーダーシップ」の研究が、ヒーロー型を好む米国でも進んでいるのはこんな時代背景からか。
「イノベーション」が必要だ、という言葉をよく耳にします。現在は大きなパラダイムシフトが起きるとともに、世の中の変化のスピードがますます速まっています。過去のデータに頼れず、過去の成功体験が通用しなくなっています。そのような状況で、いかにイノベーションを起こすかというのは、わたしが会う多くの企業の方が言っており、危機感を持っています。最近医療関係の経営者に会い、興味深い話を聞きました。
イノベーションを先に考えるのではなく、お客さまのところに足を運び、お客さまのUnmet needs(応えられていないニーズ)を探る、何が解決されなければいけないのか、を考えることが最も大切だそうです。
イノベーションは日本では「技術革新」と訳されたこともあり、何か新しい技術を生み出すようなことのようにいわれていますが中国では「創新」――新しいことを創ることと訳されています。新しいことはもちろん技術の分野で重要になりますが、新しい考え方、新しいやり方はあらゆる分野で求められています。
こんな技術が開発できたらこんなものを作ろうとなりがちですが、お客さまのニーズは何か、それを解決しようとする中で新しい技術が生まれ、イノベーションが生まれてきます。そのためにはCustomer insight(顧客への深い洞察)が欠かせず、ニーズをどうしたら引き出せるか、徹底的なトレーニングが必要となります。お客さまと向き合い、ニーズをくみ取っていく、そこにはコミュニケーションも欠かせません。
わたし自身は現在慶応義塾大学大学院メディアデザイン研究科で学んでいますが、どうしたらイノベーションを起こせるのか、日々議論し話し合っています。一つの特徴として「デザイン・シンキング」を学び、実践しています。デザイン・シンキングの特徴は「フィールド・ワーク」を通して、つぶさに現場を観察してどこにニーズがあるのかを見つけ、ときに実際に話も聞きながらも探っていきます。現場に行かなければ実際のニーズはくみ取れない、ということを毎日叩き込まれています。
世の中が急速に変化する中で、自社の持っているリソースだけで対処できる時代も終わりました。自社の力だけではなく、外部のリソースも上手に使う必要性がでてきています。逆に自分たちとは異なる考え方、もののとらえ方をする人を入れたほうがイノベーションを起こしやすいともいわれます。
わたし自身が最近体験したことがあります。それは、ある企業との業務の契約の際契約書の欄に「パートナー」と書かれていたのです。この企業では、一緒に仕事やプロジェクトをしているすべての人をパートナーと位置づけ、それを実践しているのです。下請けという言い方がありますが、イノベーションを起こすためには、組織内外を問わずあらゆる人の知恵をフル活用し、化学反応を起こす必要がある。それを分かっているからこそ契約書の欄にパートナーと書かれているのでしょう。
弊社でも社員はもちろんですが、外部の方にも仕事の協力をいただいています。彼らがいなければ弊社の仕事は成り立たず、それを常に意識し、その姿勢から学んでいきたいと努めています。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授