負けない仕事術のススメビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(1/2 ページ)

いつもと違う、なんか変だと感じたときは、背後に大きな問題につながる何かが起きている。問題を想像し、計算し、対策を取る。問題は小さいうちは対処できるが、大きくなると対処できなくなるからだ。

» 2013年06月13日 08時00分 公開
[山本真司,ITmedia]
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 1990年代の後半、バブルの崩壊過程で、「勝ち組」、「負け組」という言葉が生まれた。1989年年末、日経平均が史上最高値38,915.87円をむかえた日の翌日付で、わたしは、ある銀行の資産運用部門のファンドマネジャー職を辞して、まだわが国では今ほどの人気を集めていなかった、外資系の経営コンサルティング会社に転職した。

勝ち組、負け組、負けない組

勝者が一瞬で敗者になる時代のサバイバル術

 その後、かつて勤めていた銀行は、合併、再編の荒波に揉まれた。経営コンサルティング業界は、わたしが最後に勤めた会社を辞めた2009年までの間、成長し続けた。わたしも幸い外資系コンサルティング会社でパートナーにまで上りつめることができた。A.T.カーニー極東アジア極東代表、ベイン&カンパニー東京事務所代表パートナーなどの経営職階にも就けた。2009年以降は、経営大学院の客員教授をしながら、個人でコンサルティング事務所を開業している。結果としてみると、この25年の間、デフレ経済にも巻き込まれることなく順調なキャリアを歩いてきた。

 一般論では、わたしはいわゆる「勝ち組」なのかもしれない。しかし、当人には、全くそんな意識はない。勝とうと思って生きてきたからではないからだ。あえて言うと「負けない」人生を送ってきたように思う。否、「負けない」ことを目標に生きてきた。後ろに、その人々の家族の顔が見えたからだ。数万人×4人家族=20万人前後。そう、自分の仕事が成功すれば20万人を幸せにできる。そうでなければ、20万人を不幸にしてしまう。そんな大きな責任ある仕事をしていることに気がついた。企業の生き死にを左右するとはそういうことだ。その日からわたしの夢、理想はコンサルティングの成功で、そこで働く社員、家族をも幸せにすることだった。この目標に、奮い立つ毎日だった。他者のために働くのが大切だということを学んだ。

 しかし、この夢の実現のためには、まず自分が首にならず、飯が食えなければ無理。従ってわたしはとにかく、この業界で、たった一人でも飯が食えるように自立することを目標にした。大企業の大きな仕事で大きな実績を残すには、十年にも及ぶ下積みで実力を高めるしかないからだ。まずは、自分が食べられるサバイバルに成功し、そして初めて夢や理想を実現できる。まずは、「食べられてなんぼ」、なのだ。仕事を選ぶにあたって夢、理想の追求、社会への貢献、利他の実現などの崇高な目標を立てるのは正解だ。しかし、崇高であればあるほど、それで稼ぐのは難しいことも多い。まず、経済的に自立する。なんとか生き残る、首にならない、それを旨に生きるのが正しい。

リスク要因は、徹底的に潰せ

 では、なんとか生き残るには? それは、マイナス情報、マイナス要因にめちゃくちゃ神経質になることだ。ちょっとした予兆から、ネガティブなシナリオを考えて、そのネガティブ要因に対策を講じておく。「ちょっと、いつもと違うな。なんか、変だな」と感じたときは、必ず背後に大きな問題につながる何かが起きているものだ。それを想像し、計算し、そして対策を取る。仕事に立ち向かうにあたって、この習慣が身についていないと苦労する。問題は小さいうちは対処できるが、大きくなってしまうと対処できなくなってしまう。トラブル処理に時間がとられて前向きの仕事もできなくなる。ちょっとした不安でも不安に頭が支配されると落ち着いて仕事もできない。

 そういうリスク要因は、手垢のついた情報では見落としがちになる。誰かが加工した二次情報では、内蔵する小さなリスクの兆候など、全部抜け落ちてしまう。そんな情報じゃ駄目だ。だから、いつでも起こったことが、そのままの状態で見聞き出来るようにしなければならない。現場、現地、現物、人に親しんでリスクの前兆をつかむ努力が身を守る。

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