憲法改正の是非や方向性を判断するうえで大切なのは、国民一人ひとりがいまの憲法の本質を理解したうえで変えるべき点、残すべき点を考えること。
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先の参議院議員選挙は、自由民主党の圧勝でした。
憲法改正は参院選の争点のひとつでしたが、選挙期間中の世論調査を見る限り、憲法よりも経済的な側面(景気がよくなるか、会社の売上があがるか、賃金があがるかなど)を重視して候補者や政党を選んだ人が多かったようです。
自民党は、すでに憲法の「改正草案」を発表し、選挙の公約として「広く国民の理解を得つつ、『憲法改正原案』の国会提出を目指し、憲法改正に積極的に取り組んでいく」と掲げていました。ですから、これから憲法改正の議論が本格的に進んでいくことになります。
憲法改正は、経済成長や景気回復等とは違った観点から検討すべき問題です。「経済政策については○○党に賛成だけど、憲法改正については△△党の方がいい」当然、このような意見があってよいと思います。
国民の憲法に対する関心が高まるなか、7月5日、私の著書「憲法がヤバい」(ディスカヴァー・トゥエンティワン)が出版されました(以下「本書」といいます)
憲法のいったい何がヤバいのか?
本書のなかでは、主に自民党の改正草案を批評していますが、その多くは疑問を呈する内容になっています。その理由は、改正草案がいまの憲法の本質を変えてしまう(少なくとも、そのように解釈される)ものだからです。
憲法の三大原則「基本的人権の尊重」「国民主権」「平和主義」については、学校の教科書にも書かれていますので、皆さん知っていると思います。しかし、憲法の本質中の本質が、憲法13条に規定されている「個人の尊厳(=国民一人ひとりが人格的自律の存在として尊重されること)」にあることは、一般に広く知られているとまではいえません。
「憲法がヤバい」――直観的にそう感じたのは、この13条の改正草案を目にしたときでした。「個人の尊厳」は、憲法学の授業で初めに学習する「憲法の根幹」です。その13条の「個人として」が、改正草案では「人として」に変わっていました。いったい、どういうことなんだろう? そんな疑念をいだきながら改正草案を見ると、憲法の本質が、「国民の権利・自由を確保すること」から、「国家の形成・成長を確保すること」に変容していました。基本的人権の内容も、「人間が生まれながらにして持っている権利」から、「共同体の中で生成された権利」に変わっていました。国民主権も、「人類普遍の原理」から、「国の統治システムの一部」に格下げされていました。
こんな大転換がはたして許されるのか、なにか取り返しのつかないことになるのではないか、そんな危機感から、本書を執筆しました。
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早稲田大学商学学術院教授
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明治学院大学 経済学部准教授