感じ方、考え方など多様な価値観を持つ部下たちを同じように管理していては「創造性を発揮する組織」にはならない。これからのリーダーにはノーブルゴールを追求してほしい。
この記事は「経営者JP」の企画協力を受けております。
ビジネス書の著者たちによる連載コーナー「ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術」のバックナンバーへ。
2020年、東京五輪開催が決定しました。招致成功は、さまざまな要因が挙げられていますが、なんといってもファイナルプレゼンテーションで魅せたプレゼンテーター一人ひとりの個の力からほとばしるパッションとチームワークが、IOCのコミッティーメンバーの心を動かし、もたらした結果だと感じます。
意思決定や行動をするとき、私たちの心は動きます。心が動くとき、それは理性だけでなく感情がベストプラクティスを導いている、EQ(感情知能)発揮の瞬間なのです。今、組織を動かすリーダーに求められているEQ発揮について述べてみたいと思います。
私がリーダー研修を開始した1997年頃は、リーダー育成にはとにかく「成果をあげる」人材にすること、それには成果をあげるために必要なスキルは何か、身につけるべき知識は何か、高いマネジメント力とは何かをつかませ、発揮できるようにすることがほとんどでした。しかし、グローバル競争力が求められる昨今、あらゆる組織において「創造」を生み出すことが求められています。
共に働く人たちの感じ方、考え方、多様な価値観をもつ部下たちを一律同じように統率・管理する従来型の管理スキルだけでは、「創造性を発揮する組織」に高めることはできません。オーケストラの名指揮者たちがしているように、ひとり一人の能力(タレント)を見定める能力と引き出すスキルをリーダーは備えるべきです。個が放つ音を引き出し、組織にハーモニーを生み出すんだという信念を持つことです。そのためには、「感情を見つめる」ことから始めることが必要です。
人間は、「思考・行動」のみで物事を達成するわけではありません。「心(感情)」が思考や行動に影響を与えて、物事を達成します。感情は、個々人の行動のエンジンを動かす燃料です。部下に適切で上質な燃料を作り出し、かれらのエンジンを効率的、快適に動かすことは、かれらの「能力を引き出す」ことを意味します。個々のエンジンのうねりが組織全体で互いに共鳴しあい、「調和した」大きな力(チームパワー)となります。
人の言動には必ず理由があります。その多くは「感情」から起因しています。気の進まない仕事に取り組むとき、ウマのあわない相手と協力して仕事を進めなければならない時、「嫌だ」という感情が湧いてきてしまいます。
感情には必ずメッセージがあります。例えば「嫌だ」という感情からのメッセージは「注意して進めよ」「慎重にやれ」と私たちに囁いているのです。できるリーダーは、部下の「嫌だ」という感情を「気にするな」「いいからやれ」とせずに、感情がもたらすメッセージを捉えて意識的に対処することで上質な燃料を作り出し、チームパワーにするのです。
サッカー界で伝説となったジダン選手のヘッドバット事件。サッカーワールドカップ決勝ですれ違いざまに相手のイタリア選手に"何か"を言われ、やりすごそうとしたものの、突然向きを変えヘッドバッド。このとんでもない事件は6秒以内の出来事でした。私たちもビジネスの場面で、ジダンのようにカッとなることで、"売り言葉に買い言葉"となる可能性をはらんでいます。人はカッとなると脳内で怒りの化学物質が発散されます。そして体内に吸収されるまでにかかる時間が6秒です。できるリーダーは、ぜひ、6秒の感覚を身につけておくといいでしょう。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授