ソーシャル、モバイル、アナリティクス、そしてクラウドという大きなテクノロジーの潮流が、さまざまなビジネスを根底から変えつつある。しかし、ガートナーのCIO調査によれば、半数の企業ではビジネスの「デジタル化」に対して準備が整っていない情報システム部門の課題が浮き彫りになった。
「CIOは腹をくくり、ビジネスのデジタル化という“ドラゴン”を飼いならしてほしい」── かつてソニーでCIOを務め、現在はガートナージャパンでグループバイスプレジデントとしてエグゼクティブプログラムを担当する長谷島眞時氏は、期待を込めてそう話す。
ガートナージャパンは3月12日、CIOへの調査をとりまとめた「2014年CIOアジェンダ」を発表、さまざまなビジネスを根底から変えつつある、いわゆる「デジタル化」に対して準備が整っていない情報システム部門の課題が浮き彫りになった。
同レポートでは、「職人的なIT」、そして洗練されたビジネスプロセスに力点を置いた「ITの工業化」という時代を経て、いよいよ企業の情報システム部門は、ビジネスモデルに力点を移した「デジタル化」を担う「第3の時代」を迎えつつあるとしているが、ガートナーの顧客リストに名を連ねる企業では51%のCIOが急速なデジタル化の波に対応できないと不安に感じ、41%がデジタル化に対応する適切な人材が育成できていないと回答している。
CIOアジェンダは、ビジネスの優先課題やCIOの戦略に関してガートナーが立てる仮説を検証する同社にとっても重要な取り組み。今回は世界77カ国2339人のCIOが回答、そのIT予算を足し合わせると3000億ドルに上る。
「デジタル化への対応という課題が明確になったが、これを脅威と捉えるか、機会と捉えるか。デジタル化が敵に回したら手ごわいドラゴンであるとすれば、飼いならすべきだ」と長谷島氏は話す。
今回のレポートでは、ドラゴンを飼いならすには次の3つの施策が必要だとしている。
「Chief Digital Officer」(CDO:デジタル最高責任者)を設置するなど、経営陣が強いデジタルリーダーシップを確立し、情報システム部門は既存のITインフラストラクチャーやアプリケーションのモダン化に努め、さらに安全で安定した従来型ITの流儀とデジタル化に適した俊敏なITの流儀という2つの流儀を習得することがカギを握るとガートナーは提言する。
北米でも5%に過ぎないというCDOの設置についてはさまざまな見方があるが、長谷島氏は、デジタル化は、ITの工業化の取り組み、言い換えれば、「ビジネスを安定的に継続するためのIT」と「成長や変革のためのIT」をしっかりと両立させていく取り組みの延長線上にあるとみている。
「ビジネスの成長や変革に貢献するITの取り組みが、ビジネスのデジタル化を実現するITに発展する。そして、デジタル化の個々のプロジェクトはインキュベーションの段階が終われば、運用段階に入る。行き来できなければならず、既存のITと切り離されたデジタル化はあり得ない」と長谷島氏はCIOの役割に期待する。
とはいえ、経営陣、とりわけCEOの果たすべき役割は大きい。本来であれば、既存のビジネスを根底から変えつつあるデジタル化への対応、CDOの設置やそれと一体化、もしくは緊密に連携するITの組織をどうするかはCEO自身が取り組むべき課題だからだ。
ガートナージャパンのリサーチ部門を統括する山野井聡バイスプレジデントは、「デジタル化は、例外なくほとんどすべてのビジネスに大きなインパクトをもたらす。デジタル戦略と組織を考えるうえで、むしろ日本企業のCEOに今回のレポートを読んでもらいたい」と話す。
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早稲田大学商学学術院教授
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明治学院大学 経済学部准教授