チームがひとつになれば大きな力を発揮できるが、チームがバラバラでは力は発揮できない。
アイティメディアが開催している「ITmediaエグゼクティブ勉強会」に、ビジネスコーチ 取締役の吉田有氏が登場。「禅に学ぶ成功するマネジメント」をテーマに、ワークショップを交えながら禅的マネジメントのあり方を紹介した。
30年前、福井県の大本山永平寺で若い修行僧たちと一緒に、1週間ほど修行したのが禅との出会いである。当時、迷いがあり、自分を見つめ直したいと思ったのがきっかけだった。
25〜30歳までの5年間、アラスカでパルプ用の材木を切り出す仕事をしていた。現地では船か飛行機しか交通手段がなく、水上に着水できるセスナで飛び回っていた。30歳の時に、アパレルメーカーのM&Aを行った父親の事業を手伝うために帰国。本当に転職すべきかどうか悩み、永平寺の門をくぐった。
結局、20年間、アパレルメーカーに勤務した後、10年前に現職であるビジネスコーチの設立に参画した。現在でも毎日10分程度、座禅を組み、月に数回お寺の座禅会に出向いている。最近、国内外を問わず禅の世界を求めている老若男女が増えている気がする。
現在、エグゼクティブコーチングにおいて、「仏性(ぶっしょう)」を引き出すことをテーマにしている。これにより、クライアントの課題の本質が観え、多くの気づきをもたらすことができる。
スティーブ・ジョブズが2005年にスタンフォード大学の卒業式で行った伝説のスピーチを見た人も多いと思うが、彼の成功を支えた考え方、生き方はなんだったのだろうか。彼のスピーチには、禅の教えにつながるいくつかのポイントがある。
いまやっていることが、いずれつながると信じていれば、他人が何を言おうが自信を持って歩き続けることができる(スティーブ・ジョブズ)
「他人が何を言おうが」というところに彼の強さを感じる。若いときに自分の愛する仕事を見つけることができたことは、彼にとって非常にラッキーだった。ITを活用して人々の暮らしを楽しくすることが彼の天職であり、ミッションである。
般若心経の中に「色即是空、空即是色(しきそくぜくう、くうそくぜしき)」という言葉がある。「形があるものは形がない、形がないものは形がある」という意味であるが、彼の思いが形を作るというスピーチは、ブッダの教えを表している。ITで人々の生活を楽しくしたいというジョブズの強い思いが形になっている。
現在は相対の世界に住んでいることが多い。相対の世界では、他人と比べて勝たなければならないために、悩みや迷いが生じる。比べると、自分にないものばかりが見えてくる。絶対の世界では、比べないので悩んだり迷ったりすることはない。比べないと、自分にあるものが見えてくる。
最高の仕事をするときには、自分の仕事を愛すること。愛するものを見つけよう。それは、あなたのハート(直感)は分かっている(スティーブ・ジョブズ)
彼は、仕事こそが自分であるという一面がある。これは禅の「一体一如(いったいいちにょ)」という言葉が示すとおり、愛する仕事と自分が一体になっているということを意味している。
アップルを追い出されたことにより、これまでの成功者の重圧が初心者の気軽さに変わった(スティーブ・ジョブズ)
成功しているという「こだわり」があると力を発揮しにくい。そこで、こだわりを一度捨てることが大事である。禅でも、こだわりを捨てることで新たなものが入ってくる、追えば追うほど離れていくという教えがある。
例えばソチオリンピックでは、女子フィギュアスケートの浅田真央選手が、ショートプログラムを失敗したが、フリープログラムでみごとな演技を披露した。
ショートプログラムでは、金メダルを追いすぎたためにメダルが離れてしまったが、フリープログラムでは、こだわりを捨てたことで、会場と一体となった最高の演技ができたのである。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授