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» 2014年10月27日 08時00分 公開

視点:非営利団体の対ドナー戦略――ブランディング・マーケティングの活用 (2/4)

[鬼頭孝幸、中里航平(ローランド・ベルガー),ITmedia]
Roland Berger

1.ドナーに対するブランディング

 そもそも、ブランドとは何だろうか。また、特に非営利団体が自団体のブランディングを考える際に注意すべき点はなんだろうか。

 「ブランド」には様々な定義や考え方が存在しているが、「特定の団体や商品と接したときに消費者が認知し思い浮かべる価値イメージ」と考えるとわかりやすい。例えば、ユニクロの商品や店舗に接したとき、ある消費者は「機能的でシンプル、かつ安価な商品」や「成長著しい」といったイメージを思い浮かべるだろう。このイメージそのものが、ユニクロの「ブランド」である。

 明確なブランドがあるからこそ、その企業・商品は消費者のマインドシェアを獲得することができる。そして、ある企業や商品に対して想起した価値イメージ(ブランド) と、自分の価値観が一致したとき、人はその企業や商品に魅力を感じる。ユニクロの例であれば、「洋服にはあまりお金をかけたくない」、「常に身に着けるものなので兎に角機能性重視」といった価値観を持っている人が、ユニクロに対し先にあげたような価値イメージを抱けば、ユニクロは魅力的な企業・商品に映るだろう。

 さて、あなたの団体は一体ドナーにどのような価値イメージを抱いてもらいたいのだろうか。この問いに明確に答えられる団体、さらにはボランティアも含めたメンバーの間でその答えが共有されている団体は大変めずらしい。まずはこの問いに答えることがスタートである。

 ドナーに抱いてもらいたい価値イメージを考える際には、「機能的価値(見える価値)」と「情緒的価値(見えない価値)」を意識的に区別することが必要だ。例えば、化粧品ブランドであれば、「最新のスキンケア技術」、「天然由来の成分による安全性」といった価値イメージは機能的価値である一方、「奇跡」や「エレガンス」、もしくは「やさしさ」といった価値イメージは情緒的価値と分類できる。

 非営利団体の場合、「機能的価値」は比較的簡単に定義できることが多い。受益者に対する活動内容と直接的に関連することが多いためである。例えば、「子ども一人ひとりに対する目に見える支援」や「人身売買に対する専門的・総合的対策」といった具合である。

 この際、注意すべき点は、どのような機能的価値を訴求するかによって、関心を抱いてくれうるドナーの数が大きく変わる、ということである。これは、様々な社会課題の中で、興味を呼び起こすテーマとそうでないテーマが存在しているからだ。そして、それは必ずしもそのテーマの重要性や緊迫性と整合していない。Malaria No More Japanが独自に行った消費者調査によると、日本においては、「難民」や「子ども」といったテーマに対する関心が高い一方、「エイズ対策」や「途上国におけるインフラ整備」といったテーマに対する関心は比較的低いことがわかっている。(図C参照)自団体の活動内容と必要な資金量やドナー数のバランスを見ながら、どのような機能的価値を訴求していくのかを慎重に考える必要がある。つまり、例えば、子どもに対する食糧支援をしている団体であれば、「子ども」というイメージと「食糧」というイメージのどちらを前面に押し出すのかは、一考の余地がある問題、ということだ。

図C:寄付したいと思えるテーマ(複数回答)

 「情緒的価値」についてはどうだろう。私たちの印象では、ドナーにどのような情緒的な価値イメージを抱いてほしいのか、明確に意識できている団体は非常に少ない。しかし、ある程度の存在感がある、もしくは、近年大きく成長している団体をみると、「信頼感」、「伝統」、「若々しさ」、「勢い」、「高い理念」といった何らかのイメージが一貫して訴求されており、ドナー(やボランティア等も含めたサポーター) が団体のそうした側面に魅力を感じ、ファンとなっていることが極めて多い。もちろん、意識せずとも結果としてこうしたイメージが醸成されることも多いが、組織の構成員が増えていったり、ボランティアの活用が本格化した段階でイメージが薄らいでしまうことも多い。

 このようにどのような価値イメージをドナーに抱いてほしいのかを明確にしたうえで、次章で論ずるように、これを一貫してドナーに伝えるマーケティング施策を検討、実行することが重要である。

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