2世紀から20世紀に書き残された約8万冊、約4千万ページにおよぶバチカン図書館の膨大な手書き文献。この人類歴史遺産をいかにデジタル化し長期保存するか……。壮大なプロジェクトが始まった。
1月23日、NTTデータが開催した年次カンファレンス「NTT DATA Innovation Conference 2015」の基調講演に、バチカン図書館のインフォメーションテクノロジーセンター CIOであるルチアーノ・アメンティ(Luciano Ammenti)氏が登場。バチカン図書館とNTTデータが取り組む、8万冊を超える文献の長期デジタル保存プロジェクトを紹介した。
1448年に設立されたバチカン図書館には、歴史的にも非常に貴重な手書き文献が数多く保管されている。代表的なものとしては、「われらの父」の記述が含まれている「ルカによる福音書」のページや「ヨハネによる福音書」がある。バチカン図書館には、これらの重要な文献を安全に保存し、広く公開する使命がある。
アメンティ氏は、「バチカン図書館に保存されているすべての文献を自宅にいながら無償で閲覧できるようにすることが夢です」と話す。現在、バチカン図書館には、印刷物の閲覧室と手書き文献の閲覧室があり、2016年には、新しい閲覧室も完成するがこれだけでは十分ではない。
バチカン図書館には、約8万2000冊の文献が保存されているが、約8年かけた調査では、設立から500年以上を経てもバチカン図書館にあるすべての文献の20%弱しか内容を把握できていないという結果が報告されている。つまり約6万5000冊の文献が、まだ手つかずのまま残っていることになる。
「歴史的書物はバチカン図書館だけのものではなく、全人類のものなのです。誰でもがこれらの書物をひもとくチャンスを得ることができなければなりません。しかしこれまでのやり方では、バチカン図書館の情報を全世界の人たちに閲覧してもらうことはできません。そこでわれわれの理念を少し変えることが必要でした」(アメンティ氏)
これまでの500年間、バチカン図書館のコンセプトは保存のための図書館であった。歴史的な文献は、温度や湿度の管理が難しく、歴史家たちが展示室で文献をひもときたいと思っても、簡単にさわれるものではなかった。そこでバチカン図書館における理念を保存から公開までに変えるという選択をした。
「手書きの文献をデジタル化して保存することにより、すべての人が、いつでも、どこからでも文献を閲覧できるようになります。ただしデジタル化の作業中に手書き文献を傷つけてしまう恐れがあります。そのためデジタル化するための厳格な手順が必要でした」(アメンティ氏)
こうした背景に基づいて、2010年にバチカン図書館の長期デジタル保存プロジェクトがスタートした。
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