優れたマネージャーは部下の成熟度、事業環境、メンバーのスタイルの違いを意識して変わるべき。優秀なプレーヤーから優秀なマネージャーに転換するためには。
この記事は「経営者JP」の企画協力を受けております。
ビジネス書の著者たちによる連載コーナー「ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術」のバックナンバーへ。
「優れたマネージャーのモデルはひとつではない。状況に応じてスタイルを変えるべきだ」
これは1977年にハーシィ(P.Hersey)とブランチャード(K.H.Blanchard) が提唱したリーダーシップ条件適応理論(通称:SL理論)の考え方です。部下の成熟度によって有効なリーダシップスタイルが異なるというものです。
私がこの本の中で「優れたマネージャーは可変である」としているのはSL理論と同じ考え方ですが、適応条件として部下の成熟度だけではなく、担当している事業環境、メンバーのスタイルの違いを意識することを提唱しています。
第1部では、優秀なプレーヤーで終わってしまう人と優秀なマネージャーに転換できる人の比較をしてみました。優秀なプレーヤーのままでずっといくのもありです。そこは否定しません。むしろ応援しています。
一方で、自分の志向や会社の必要性からマネージャーとして活躍することが期待されている人がいます。しかし、優れた能力や実力があって、凄い結果を残してきたプレーヤーが、必ずしもマネージャーとしてメンバーを率いたとき、チームで結果を出せるとは限りません。
自分に自信があった人ほど、マネージャーになったときの現実とのギャップに悩み、ストレスを抱えます。マネージャーに大事なものは、優れたフォロワーシップです。リーダーが部下を動かすことばかりでなく、部下のためにリーダーが動くこともあるわけです。
「優秀なプレーヤーで終わる人は、自分の主観で動く」「優秀なマネージャーとなる人は、自分を客観視して動く」など、私が置かれた、いろいろな修羅場体験や不条理な状況と対峙した体験を元にして、優れたマネージャーの命題ともいえる40のポイントを抽出しました。
「理論」ではなく、実際はこうなのであるという具体的な「行動」や「思考」、そして「心の持ちよう」を知っていただき、皆さん自身は、今現在、どのようなタイプなのかも発見することができるようになっています。
第2部では、アプライドマテリアルズジャパンを創業しアプライドマテリアルズのグローバル化と、1998年には本社上席副社長として会社全体の経営に携わり1兆円を越える企業に成長させた岩崎哲夫さんと石井静太郎さんが創立したコンサルティング会社のIIOSS社が開発したマネジメント診断の考え方をご紹介しながら、自分のマネジメントスタイルを客観視するためのヒントをまとめました。
皆さんはもうすでに、自分自身で自覚しているしていないに関わらず、それぞれ固有の「マネジメントスタイル」を持っています。皆さん自身が自然に指向性を持っている仕事のスタイルです。このマネジメントスタイルは次の4つの型に分類されます。
それぞれのタイプごとに、異なるマネジメントスタイルと行動特性を持っています。ただ、残念なことに、多くの人が自分のマネジメントスタイルがどんな特性を持ったタイプなのかを知らずに仕事をしています。
そのために、自分のタイプに合わない仕事のスタイルや環境でうまく結果が出せなかったり、自分のチームメンバーが自分と正反対のタイプだったときに、相手のスタイルや行動特性が理解できずにストレスを抱えるということが多いのです。
そのときに、メンバーのスタイルを変えさせようとするのは大変です。それよりも、マネージャーが自分のスタイルを変化させるほうが成功確率が高く、しかもラクです。
自分のスタイルを変えるということに「抵抗」を感じるという人もいますが、これは根本から自分を変えてしまうことではなく、むしろ「演じる」に近いものです。自分のスタイルを知り、その上でチームメンバーの特性、担当している事業環境などを意識して、最も適したスタイルのマネージャーになりきること、自分のスタイルを、場を最適化するために使い分けるのは当たり前のことなのです。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授