トップマネジメントチームに必要なのは、仲の良さではなく仕事振りの良さだ。共に仕事をする以上、尊重し合わなければならないが尊敬し合う必要はない。
第3回は、「トップマネジメントチームがチームとして機能するために必要ことのひとつ、「自らの担当以外の分野は直ちに担当メンバーに回さなければならない」ということを話した。今回は、「会議室の外で批判したり、けなしたりしてはならない」というテーマで経営チームが機能するために必要なことをお伝えする。
「先週、決定したことは会社のために良くない」と取締役が言ったり、
「社長のあの決定は、実は私は反対だったんだ」と副社長が言ったり、
「専務のあの企画、自分は賛成できない」と社長が言ったり、
「常務は営業部のことしか考えてくれていない」と執行役員が言ったり。
もちろん御社でこんな言葉を耳にすることはないと思う。いろいろな人がいればいろいろな考えがあって当然だ。一方、どんなにいい考えがたくさんあったとしても最後は1つの考えに決定しなければならない。いろいろな考えを1つにまとめ決定することこそ、トップマネジメントチームの仕事だ。
それは、「全員の考えを足し算したもの」ではなく、「全員の考えから導き出される最善の決断が下されたもの」だ。
満場一致で何かが決定されることは極めて少ない。決定された内容は、自分の考えに合致するものもあればしないものがあるのが現実だ。
もちろん、自分の考えにそぐわない形で何かが決定された時は、不満が込み上げたり、憤ったりすることもあろう。そうかといって、トップマネジメントチームのメンバーが、それ以外のメンバーにその不満を漏らしてしまえば、「うちの経営陣はいつも批判し合っているけど、大丈夫なんだろうか」と、不信感をもたらし、結果として組織の力を損ねてしまう。
組織の中で仕事をしている以上、すべてが自分の意図とおりに進まない。多少の不満はつきものだ。現実は、うまくいくことよりうまくいかないことの方が多い。だからかといって、トップマネジメントチームが陰で批判し合うようなことを容認してしまえば、事業は伸びないし、会社も良くなっていかない。事業を伸ばし会社を良くしていくために、トップマネジメントチームのメンバーは何を守らなければならないのだろうか。ドラッカーはこう言っている。
「トップマネジメントチームのメンバーは、仲良くする必要はない。尊敬し合う必要もない。ただし攻撃し合ってはならない。会議室の外で互いのことをとやかくいったり、批判したり、けなしたりしてはならない。ほめ合うことさえしない方がよい。」
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早稲田大学商学学術院教授
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明治学院大学 経済学部准教授