ゼネコン、サブコン、CM 東京五輪前に押さえておきたい「建設の常識」ビジネスパーソンのための建設と建築(2/2 ページ)

» 2016年11月21日 07時21分 公開
[木村讓二ITmedia]
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知識・経験の差が大きい

 工事の流れはとてもシンプルです。発注者、設計者、ゼネコンがそれぞれ役割を果たすことで、発注者が希望する建物が計画通りにでき上がるはずです。

ところが、現実はそうとも限りません。

 例えば、発注者はそれぞれ「工場を造って生産性を高めたい」「マンションを建てて家賃収入を得たい」といったニーズを持っています。それを明確に依頼先(設計者やゼネコン)に伝えることが発注者の役割の1つです。

 そのニーズを図面にするのが設計者の役割ですが、中には芸術志向が強い設計者もいます。「自分のデザインを主張したい」という意欲が強く、発注者のニーズが後回しになった結果、使い勝手が悪い工場や、収益性が乏しいマンションといった「作品」ができ上がってしまうこともあるのです。

 ゼネコンは工事全体を管理し、決められた予算と期間の中で、図面通りの建物を造る役割を持ちます。しかし、工事の途中で発注者の依頼内容などが変わったり、材料費の相場が大きく変動したりすると、予算をオーバーすることがあります。段取りが悪いことなどが原因で工期が延び、工場やマンションの稼働開始が遅れることで、生産が滞ったり、家賃収入が減ったりすることもあります。

 設計者の特性、建設費用や材料費の相場、工期が延びるリスクなどは、業界内にいる人にとっては「常識」かもしれません。しかし、発注者は知らない人がほとんどでしょうし、人生で初めて工事を依頼する発注者もいます。つまり、発注者には「知っているようで知らないこと」がたくさんあり、建設の知識や経験の面で設計者・ゼネコンとの間に差があります。それが設計者・ゼネコンとのコミュニケーション不足や、条件・契約の確認漏れなどにつながってしまうため、結果として発注者が不利益を被ってしまうのです。

常識を変える5人目の登場人物とは

 この問題を解決するために、近年注目を集めているのがコンストラクション・マネジメント(CM)です。CMは、中立的な立場として発注者と設計者・ゼネコンの間に入り、工事全体をマネジメントする人。ひとことで言うと、発注者を守る役割を持つ5人目の登場人物です。

 発注者と設計者のやり取りでは、CMが発注者のニーズを伝え、図面の確認などを行います。ゼネコンとのやり取りでは、見積もりの確認や価格交渉、契約書の確認などを行い、予算オーバーのリスクを管理します。この2点がサポートされるだけでも、知識・経験面でのアンバランスが解消され、発注者が不利益を被る可能性は小さくなるでしょう。

 このような効果が期待できることから、国土交通省による公共工事の運用指針の中にもCM方式の活用を検討するという内容が盛り込まれるようになりました(※)。また、それをきっかけに、設計会社やゼネコンから独立してCM会社を立ち上げる人も増えています。

 日本国内の建設・建築業界には、受注の流れやコスト面で不透明なところがありましたが、CMという5人目の登場人物が加わったことで、従来の常識であった業界の慣習や受注構造が変化しています。CMを含む5人の登場人物で建設・建築プロジェクトを進めるという新しい常識が生まれつつあるといえるかもしれません。

(※公共工事の品質確保の促進に関する法律(品確法)第21条)

著者プロフィール:木村讓二

株式会社プラスPM 代表取締役社長 / 一級建築士・認定コンストラクション・マネジャー。

1957年、大阪府生まれ。設計会社、マンション販売会社に勤務後、1986年、28歳で株式会社プラスPMの前身であるプラス建築事務所を創業。1995年、老人ホームのコンサルタント事業を始め2年後の1997年には、現在の礎となるコンストラクション・マネジメント事業を始める。2003年に東京支店を設立し、現在の社名である株式会社プラスPMへと社名変更。2013年、マレーシアの建設事業の支援依頼により、現地法人Plus PM Consultant Sdn.Bhdを設立。


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